トランペットや太鼓、指笛を使った賑やかな応援スタイルが特徴の日本のプロ野球だが、得点機に流れる「チャンステーマ」は、一際不思議な魅力を備えている。長年球場に足を運んでいるファンなら、外野席で歌われるキャッチーなメロディーが、それこそ映画音楽や舞台演出のように、白熱する試合をさらに盛り上げてくれることを知っているだろう。そこでここでは、パ・リーグ各球団の代表的な「チャンステーマ」を紹介していきたい。
【福岡ソフトバンク】
・チャンステーマ1(わっしょい)
もともとは藤本博史一軍打撃コーチの現役時代、応援歌として使われていた曲だ。単純で歌いやすい歌詞、メロディーとなっており、初めて球場に訪れたファンでもすぐに応援の輪に入ることができる。
またこのチャンステーマは、最前列のファンがメガホンで外野フェンスを叩きながら歌うことでも有名で、「一発」への期待感がよく表れている。独特の雰囲気の中、実際に本塁打が飛び出たときの興奮は、言葉では言い表せないほどだ。昨年圧倒的な強さを誇った福岡ソフトバンクのチャンステーマであるだけに、トラウマのようになっている他球団ファンも多いのではないだろうか。
【埼玉西武】
・チャンステーマ4
男女パート分かれた歌から始まり、外野席の全員でジャンプする流れとなっている。歌詞、メロディーともに、12球団屈指の人気を誇る名曲だ。それまで比較的短い曲が続いていた埼玉西武のチャンステーマに、新しい風を吹き込んだ曲でもある。ビッグイニングには、公式応援グッズのフラッグを振る応援スタイルが新たに追加された。満員の球場で無数のフラッグが揺れる光景は圧巻である。
【楽天】
・チャンステーマ1
厳かな前奏から始まるこのチャンステーマは、本拠地カラーがうまく取り入れられている。まずメロディーは仙台の遊園地のテーマソングを利用したものであり、歌詞の中にも仙台を連想させるような単語が散りばめられている。また、楽天のチャンステーマは関東限定や関西限定、九州限定など様々なバリエーションを持っているため、どの球場でどの歌が歌われているのかを考えてみると、また違った面白さを感じられるかもしれない。
そして、昨年の12月28日、楽天は「応援を盛り上げてチームを勝利に導く」、「観ていて楽しい応援を創る」、「参加したくなる応援にする」というコンセプトのもと、球団・私設応援団を中心に、応援プロデュースチームを結成することを発表した。千葉ロッテの応援団長を務めていた神俊雄(ジントシオ)氏などがそのチームのメンバーとなり、大きな注目を集めている。詳細が明かされるのを楽しみに待ちたい。
【オリックス】
・丑男/COW BOY
一言で言えば、ファンの深いチーム愛を感じられる曲だ。トランペットのソロパートから始まり、一気にボルテージが上がる流れは、応援する側もより一層気持ちが入り、ここが勝負の分かれ目であることを実感することができる。2004年の球団合併に対するファンの切ない思いが込められた歌詞は、ぜひ噛み締めて聞いてほしい。
他にもタオルを使ったダンスを踊る曲や、関西弁で歌うチャンステーマ「欲球根性~河内のオッサンの丑~」など、見応え・聞き応えのある応援がオリックスの特徴である。
【北海道日本ハム】
・チャンステーマ3(チキチキバンバン)
トランペットに合わせてメロディーが歌われた後、男声コール・女声コールが起きるが、特徴的なのは女性の声の大きさである。北海道日本ハムの試合における女性ファンの比率の高さは、北海道日本ハムの選手が「男性アイドルのコンサート顔負け」と語るほどだ。関東限定のチャンステーマも男女パートが分かれているので、北海道日本ハムのチャンスの際にはぜひ注目してもらいたい。
【千葉ロッテ】
・チャンステーマ1、チャンステーマ3
千葉ロッテのチャンステーマは、高校野球の応援でも広く使用されており、メロディーに聞き覚えのある人も多いかもしれない。その中でも特に人気なのがこれらの曲である。
千葉ロッテの応援の特徴として、メガホンを使わず指笛を効果的に取り入れていること、外野席のファンのユニホームの色、声、手拍子が揃っていることなどがある。その驚異的な一体感が生み出す迫力のある応援は、対戦相手の選手からも強く意識され、競技の枠を超えて度々メディアに取り上げられてきた。「応援が格好いい」という理由で、千葉ロッテのファンになったという人も珍しくない。
数多くの応援歌・チャンステーマを全て把握することは難しいが、それらは確実に選手の士気を高め、球場の空気を変える力を持っている。打席で自身の応援歌を口ずさむ選手もおり、ファンが楽しみながら応援の声を上げることは、きっと長いシーズンを戦う彼らの活力になっているだろう。そろそろ公式戦が恋しくなる時期。選手とファンをつなぐ架け橋にもなるメロディーを聞きながら、まだ訪れたことのない球場、馴染みの薄いチームへ思いを馳せてみるのも、オフシーズンの楽しみのひとつとなり得るかもしれない。
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