埼玉西武・来季に向けて

パ・リーグ インサイト 成田康史

2017.11.9(木) 00:00

辻監督の下で新たな船出となった今季の埼玉西武。エース・岸投手が楽天に移籍し苦戦が予想された今季だったが、炎獅子ユニホームをまとって球団記録に迫る13連勝をマーク。最終的には4年ぶりのAクラスとなるリーグ2位でシーズンを終えた。

「2017 ローソンチケット クライマックスシリーズ パ」で本拠地開催を勝ち取り、ファーストステージでは3位・楽天に対して苦杯を嘗めたとはいえ、数多くの実りを得た2017年。いよいよ2008年以来のリーグ制覇を視界に捉えるだろう来季に向けて、期待の選手たちを紹介していきたい。

今季の埼玉西武を象徴する選手といえば、やはりルーキーの源田選手だろう。新人遊撃手としては石毛宏典氏以来36年ぶりとなる開幕スタメンの座をつかむと、シーズンを通して内野の要を守り抜き、球史に残る「新人遊撃手フルイニング出場」を達成した。

開幕当初はシーズン前から課題とされていた打撃で苦しみ、4月中旬までは打率2割台前半を推移する。しかし、4月21日の北海道日本ハム戦から4試合連続マルチ安打を記録すると、その後は徐々に打率を上げていき、最終的に.270という好成績を残した。

源田選手といえば社会人時代から高い守備力を評価されていたが、その脚力でもチームに貢献した。リーグ2位の37盗塁を記録し、リーグ唯一となる2桁(10本)の三塁打。来季は2年目のジンクスに挑むことになるが、輝かしい新人記録を残したルーキーイヤーを経て、どのような活躍を見せてくれるだろうか。

クライマックスシリーズファーストステージで4番に座り、今や押しも押されもせぬ埼玉西武の主砲となったのが、4年目の山川選手だ。特徴的なフォームから豪快なフルスイングで打球をスタンドに運ぶ新世代のアーチストは、8月20日に初めて一軍で4番に座ると、最終戦までその座を譲らず、埼玉西武の新・4番として存在感を示した。

昨季は自身初の2桁本塁打(14本)を放ち、今季も夏場から出番を重ねながら23本のアーチを描いた。今季のパ・リーグ本塁打王・デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)の35本とは12本差と、フルシーズンを戦い抜けば射程圏内に入る数字であるだけに、来季は課題の春先にしっかりと結果を残し、自身初のタイトルを狙いたい。

今季の埼玉西武は、多くのポジションを務めながらシーズンを戦い抜くレギュラー選手がいたが、そんな中でも3年目の外崎選手はそのユーティリティー性を大いに発揮し、自身初の規定打席に到達する活躍を見せた。遊撃のポジションに前述の源田選手が座ったことで、今季は本格的に外野手に挑戦。開幕当初はスーパーサブとしてベンチに入った。

しかし、4月中旬からスタメンへと名を連ねるようになると、10本塁打、23盗塁という好成績を残す。主に下位打線を打ちながらも、シーズン終盤には1番として先発することも。内外野様々なポジションを務め上げる器用な守備とともに、その打棒でも存在感を示した今季。来季も強力打線の曲者として、外崎選手の力が必要になることは間違いない。

長年課題とされてきた救援陣では、2人の若手が台頭した。1人目は社会人出身のルーキー・平井投手だ。5月23日に一軍登録されると、右横手からの速球とスライダーを武器に、42試合に登板。時にワンポイント、時にロングリリーフと、様々な役割を臨機応変にこなし、プロ初勝利を含む2勝、4ホールド、防御率2.40と安定した成績を残した。一軍では全て中継ぎとしての登板だったが、ファームでは先発マウンドに上がっている。オールドルーキーの2年目に、大いに注目していきたい。

ここ数年、武隈投手に頼っていた中継ぎ左腕の枠にも、期待の新戦力が出てきた。2年目の野田投手は、今季は38試合のマウンドに上がった。シュート、スライダーなど左右に揺さぶる変化球を駆使し、被打率は何と.171。さらに、1イニングに安打と四球で許した走者の平均を示すWHIPは0.99と、ほとんどピンチを招かない盤石な投球を見せた。昨季は3.94だった防御率も1.99と良化している。持ち味である強気の投球で、来季はますますレベルアップした姿を見せてほしい。

次期エース候補と名高い高橋光投手は、大きな期待をかけられながらも、悔しいシーズンを過ごすことになった。開幕からしばらくは白星に恵まれず4連敗。5月9日の北海道日本ハム戦で今季初勝利を挙げ、続く試合にも勝利したものの、故障の影響で戦線離脱を余儀なくされ、実戦復帰までおよそ2カ月半を要する。

しかし、8月からのファームの試合では、来季につながる投球を見せた。5月までは一軍で与四球率5.13と制球に苦しんでいたが、8月以降のファームでは18イニングスを投げて6四球、与四球率にして3.00と明らかな改善を果たす。4カ月半ぶりの一軍復帰戦となった9月24日のオリックス戦でも、その成長を示すように6イニングスを投げ与四球はわずかに1、奪三振5。エース候補の真価が問われる来季にはどのような投球を見せるか。菊池投手とともに左右の両輪となれば、10年ぶりのリーグ優勝もグッと近づいてくるはずだ。

遊撃、中継ぎと、長年課題とされてきたポジションに続々と若い芽が現れ始めた埼玉西武。伝統の強力打線はその威力を増し、辻監督の掲げる「守り勝つ野球」を体現するピースは揃いつつある。4年ぶりのAクラスをきっかけに「常勝西武」復活へ。来季は10年ぶりのリーグ優勝、さらには日本一に向けて、炎獅子を上回る勢い見せ付けていきたい。

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パ・リーグ インサイト 成田康史

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