クールな男が、チームと、メットライフに駆け付けたファンを熱くさせた。先発の楽天・岸投手が埼玉西武打線を7回途中無失点と抑え、勝利に導いた。負ければ今季の長い戦いが終了という崖っぷちの試合で勝ちを呼び込み、「2017 ローソンチケット クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ突破へ逆王手とした。
表情を変えずとも、その根底に闘志がみなぎっていた。「ノリ(則本)の悔しい気持ちもあった。その分もしっかり持って、明日の美馬につなげようという気持ちで投げました」。14日の初戦はエースの則本投手がまさかの7失点KO。チームも無得点と沈黙した試合をひっくり返すかのように、今度は岸投手が圧巻のゼロ行進を続けた。
マウンドへ上がる際は、メットライフドームのブーイングを浴びた。昨季まで在籍した古巣。「すごく怖さのある打者が多い中、しっかりストライク勝負ができたと思う」。ピンチらしいピンチは5回1死、外崎選手に左翼へ二塁打を打たれた場面くらいで、続く中村選手、岡田選手をきっちりと抑えた。「岸を打てなかった」と、敗れた辻監督も認めた。
8月以降は勝ち星を挙げられず、8勝10敗でレギュラーシーズンを終えた岸投手。それでも防御率2.76という数字からも分かるとおり、試合は作りながら援護に恵まれない試合も多かった。だがこの日は打線が初回からサポート。先頭の茂木選手が相手先発・十亀投手の初球の変化球を左中間へソロ本塁打。表情からも緊張の見えた右腕の出鼻をくじくと、2回1死1,2塁、この日スタメンに抜擢された枡田選手が左中間に適時二塁打を放つと、続く嶋選手が2球目をスクイズ。早々と3得点を奪うと、7回にも2死1,2塁から茂木選手の内野安打で4点目をもぎ取った。
ヒーローインタビューに臨んだ岸投手はファンへのメッセージを求められると、しばし沈黙の後「福岡に行きましょう! 美馬が頑張ってくれると思います」と呼びかけ、大歓声を受けた。パ・リーグのクライマックスシリーズでは初戦を取ったチームが100%、ファイナルステージに進出している。その歴史を変えられるか。楽天が下剋上の第一歩を踏んだ。
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