ロッテ、チーム打率リーグ5位も得点数はリーグ3位 今季も目立った“1つ先の塁を狙った走塁”

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2022.11.21(月) 10:45

10回ロッテ一死三塁、角中の二犠飛で三走高部が生還 (C) Kyodo News

◆ 髙部の走塁力

 ロッテの攻撃の武器のひとつ、それは“1つ先の塁を狙った走塁”だ。今季も得点を挙げるためには相手の守備のミス、相手の隙を突いて1本の安打で一塁走者や二塁走者からホームに還ってきたり、相手の守備の動きを見て打者走者が一気に二塁へ陥れるなど、高い“走塁力”で得点に繋げた。

 44盗塁で盗塁王に輝いた髙部瑛斗は今季、何度も走塁でファンを沸かせた。7月9日のオリックス戦では、0-2の4回無死一、三塁で安田尚憲が三遊間後方に放ったフライをショートがランニングキャッチし、捕球体勢が悪かったのを見て三塁走者の髙部がホームイン。

 9月23日のソフトバンク戦では、5-3の10回一死三塁で角中勝也の二飛で、前進守備で前目に守っていた二塁手が背走しながら捕球したのを見て、三塁走者の髙部がスタートを切り生還した。

 また、二塁走者の髙部が三ゴロで三塁手が一塁に送球したのを見て、三塁へ進むシーンというのが多かった。6月11日のDeNA戦、0-0の初回一死二塁から中村奨吾の三ゴロで三塁手が一塁へ送球したのを見て、二塁から三塁へ進めば、6月22日の西武戦でも1-0の6回無死二塁から中村の三ゴロで三塁手が一塁に送球するのをみて二塁走者の髙部が三塁へ進んだ。8月12日の日本ハム戦でも、0-0の初回一死二塁で中村の三ゴロで三塁手が一塁に送球したのを見て、二塁走者の髙部は三塁へ進んでいる。


◆ ベテラン荻野の走塁技術の高さ

 今季通算250盗塁を達成し、10月で37歳となった荻野貴司は走塁技術の高さ、判断力は健在だ。

 8月10日のソフトバンク戦、1-3の6回一死二塁で中村が空振り三振。捕手がボールを拾い一塁へ送球している間に、二塁走者の荻野がスタートを切り三塁へ進んだ。8月19日の楽天戦では1-1の3回二死一、二塁で、山口航輝の打席中に一塁走者の中村が二塁盗塁を試みると、捕手が二塁に投げたのを見て三塁走者の荻野がスタートを切りホームインした。

 今年8月に行ったオンライン取材で荻野は「順調に落ちてきている。そんなにスピードはないと思います」と口にしたが、今季も得点に結びつける走塁を数多く披露した。まだまだスピードは衰えていないように見える。


◆ 二塁から三塁へタッチアップが多かったキャプテン

 中村は4月10日のオリックス戦、1-0の4回無死二塁からレアードの一邪飛で一塁手の捕球体勢を見て二塁走者の中村は三塁へ進む好走塁。同日のオリックス戦では、一死一塁からレアードのレフト線のあたりでレフトがクッション処理でもたついている間に一塁から一気に生還した。

 中村は二塁走者の時に、三塁へのタッチアップが非常に多かった。4月24日のオリックス戦ではマーティンが放ったセンター正面のフライで二塁から三塁にタッチアップすれば、5月3日の西武戦で山口の右飛で二塁から三塁に進んだ。さらに5月13日のオリックス戦、5月15日のオリックス戦などでは、三塁走者に続いて二塁走者の中村が三塁へタッチアップと、“1つ先の塁を狙う”姿勢を見せ続けた。


◆ 俊足選手たちの走塁力

 藤原恭大は4月3日の西武戦、0-0の初回一死一塁でマーティンの打席中、捕手が弾いたのをみて一瞬の判断で二塁へ進塁すれば、和田康士朗も4月30日の日本ハム戦、5-3の8回一死一、三塁から松川のボテボテの投手ゴロで、好スタートを切り三塁からヘッドスライディングでホームインした。

 岡大海は5月24日の広島戦、6-0の9回無死一塁からエチェバリアの打席中、二塁盗塁を試みると、捕手が後逸。その間に一気に三塁を陥れる好走塁&好判断(記録は二塁盗塁、捕逸の間に三塁進塁)。小川の犠飛の間に生還し、無安打で得点を奪ったということもあった。


◆ 足の速い選手たちだけじゃない!

 荻野、岡、髙部、和田、藤原らのようなスピードはない選手たちも、判断良く次の塁を狙った。

 井上は「足が遅いというところはあるんですけど、それは多分盗塁だけだと思う」と話す。「走塁というのは相手の隙というか動き次第でなんとでもなる。走塁ではみんなと一緒にできるように自分で心がけています。あいつ無理か、いけないかではなくて、いってみてトライというのはまだまだやっています」と、8月26日の楽天戦、1-0の8回二死一塁で安田が左中間に放った安打で、一気に一塁から生還した走塁は見事だった。

 菅野剛士は5月8日のソフトバンク戦、3-8の6回一死一、三塁でレアードの打球はショートとレフトの間のフライとなり、ショートが後ろ向きでキャッチしているのを見て三塁からスタートを切り生還。角中勝也は9月12日の日本ハム戦、2-0の4回一死一塁で佐藤のセンター後方の飛球で、センターの捕球体勢を見て一塁から二塁へタッチアップ。茶谷健太のレフト前適時打でホームに還ってきた。

 安田尚憲や山口航輝は1本の安打で何度も一塁から長駆ホームインした。8月24日の西武戦では、2-2の7回二死一、二塁から井上晴哉が左中間を破るあたりで二塁走者に続いて一塁から山口も一気に生還した。

 ここでは紹介しきれなかった以外にも、得点につながったチーム打撃、走塁が数多くあった。チーム打率リーグ5位の.231も、リーグ3位の501得点を挙げることができたのも、走塁意識の高さが関係しているのではないだろうか。秋季練習でも来季に向けて、次の塁を狙う走塁練習を行っていた。走塁という武器に加えて来季、“ここ一番の場面で勝負強い打撃”、“打線に繋がり”が出て来れば、得点力は今季以上に上がるはずだ。

文=岩下雄太

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