高卒4年目の今季は二軍で打撃3冠

2021年に北海道日本ハムからドラフト2位で指名を受けた有薗直輝選手。高卒4年目の今季は二軍成績を急激に伸ばし、イースタン・リーグで首位打者、最多本塁打、最高出塁率の3つの打撃タイトルを獲得。打率3割、ホームラン15本以上の同時達成はファーム全体でも6年ぶりであり、直近10年間を見ても塩見泰隆選手(東京ヤクルト)、山川穂高選手(当時:埼玉西武)ら6人しか達成者がいない圧巻の成績だった。今回はそんな有薗選手のバッティングの成長を、二軍のデータから探っていきたい。
入団当初の課題であったコンタクト力が向上

まず注目したいのがコンタクト率だ。入団当初はファーム平均を10ポイント以上も下回るなど、空振りの多さが課題となっていた有薗選手だが、プロ3年目の昨季に数字が大きく改善。さらに今季はファーム平均に迫る76.3%までコンタクト率を上昇させるなど、ボールを捉える能力が着実に向上していた。
選球眼が劇的に改善

続いてボールゾーンスイング率を見てもらいたい。昨季まではファーム平均と同程度の30%前後を推移していたが、今季は22.6%と大幅に減少。特に低めのボール球に対してはスイング率が前年から9ポイントも低下するなど、選球眼が飛躍的に向上していたのだ。ボール球を見極められるか否かは、空振り率にも大きく影響する。ボールゾーンスイング率の改善が、前述のコンタクト率アップにも寄与しているのは間違いないだろう。また、今季はイースタン・リーグ3位の43四球を選び、全打席に占める四球割合も前年の7.2%から11.7%まで上昇。出塁率をはじめとした今季の成績アップに、選球眼の向上は欠かせない要素だったと考えられる。
質の高いフライ打球を放ち、ホームラン数も増加

イースタン・リーグで首位打者を獲得するほどにバッティングの安定感が増している有薗選手。ここからは、持ち味である長打に関するデータを掘り下げていこう。ホームランを打つためには角度のついた打球が飛ばすことが求められるが、フライ割合はプロ1年目からファーム平均を上回る50%以上をマーク。今季も例年とほぼ変わらないフライ割合となっていたが、フライ打球がホームランになった割合を示すHR/FBが14.1%と飛躍的に上昇。今季一軍で2ケタ本塁打を放った36選手の平均値が9.6%であることを踏まえると、二軍成績とはいえ優秀な数値であることが分かるだろう。フライ打球時の打率.480という数字にも表れている通り、今季は好結果につながる質の高いフライ打球が増えていたのだ。
引っ張り中心から一転、今季は広角に長打を量産

フライ打球の成績のみならず、長打の打球方向にも変化が表れていた。昨季は全9本塁打のうち7本を左方向に記録するなど、これまでの長打は引っ張りの打球が大半を占めていた。一転して今季はセンター方向と逆方向への長打が増加。3方向にほぼ均等に打ち分けられており、本塁打もレフトに9本、センターに5本、ライトに4本と方向を問わず量産できていた。恵まれた体格から放たれる打球の力強さにはルーキーイヤーから定評があった有薗選手。確実性が増した今季は広角に長打を放てるようになったことも、打撃の安定感アップにつながったのではないだろうか。
8月13日には一軍で待望のプロ初ヒットを記録し、本人も「この4年間で一番いいシーズン」と振り返るなど、大きな手応えをつかんだ25年。主に守るサードとファーストのポジションには、来季の開幕4番に指名された郡司裕也選手をはじめ、清宮幸太郎選手、野村佑希選手、アリエル・マルティネス選手とライバルが多くいるが、その競争に加われるポテンシャルは十分に見せつけた。プロ入り5年目を迎える26年シーズン。一軍の舞台でホームランを量産し、2年連続で2位につけているチームをもう一つ押し上げる活躍を期待せずにはいられない。
※文章、表中の数字はすべて2025年シーズン終了時点
文・データスタジアム
