楽天イーグルスの国際スカウトとして、長年にわたりチームを支え続けているダレル・ラズナー氏とデリック・ホワイト氏。今回は、彼らのキャリアやそれぞれから見た楽天イーグルスの外国人選手について聞いた。
後編では、ホワイト氏に焦点を当てる。現役時代はカブスや阪神タイガースなどで、勝負強い打撃と全力プレーを見せ、2010年にスカウトとして楽天イーグルスに入団。以降は長年、国際スカウトとして、外国人選手の発掘・調査に励んでいる。
外国人野手3名の強みとは ボイトはAJと重なる部分も
ホワイト氏から見て、今季の外国人野手3選手は、圧倒的な身体能力の中に「知性」と「適応力」を秘めているという。
「まず新戦力のカーソン・マッカスカーですが、初めて見た時はそのサイズと身体能力に圧倒されました。単なるパワーヒッターではありません。あの巨体に似合わず非常に俊敏で、打撃の正確性も高い。日本でも十分にアベレージを期待できる素材です」

「そして、昨季途中からチームを支えるオスカー・ゴンザレス。彼は非常にアグレッシブに振っていくスタイルですが、どんな球でもコンタクトしてヒットにする特殊な才能を持っています。性格も社交的で、誰とでもすぐに打ち解けられる。こうした人間性の良さも、日本で成功し続けるための大きな武器になります」

そして、ホワイト氏が「今季の鍵」として全幅の信頼を置くのが、元メジャー本塁打王で、昨季途中に加入したルーク・ボイト選手だ。
「ルークは、技術はもちろんですが、何よりその『Makeup(人間性)』が素晴らしい。彼は実績にあぐらをかくことなく、常にチームの勝利を優先する最高の『ファミリー・チームメイト』です」

さらにホワイト氏は、ボイト選手がチームに与える「目に見えない影響力」を、かつて日本一に貢献し、先日アメリカ野球殿堂入りが発表されたアンドリュー・ジョーンズ氏になぞらえて語る。
「楽天イーグルスには浅村(栄斗)のように常に周囲を助けようとする選手がいますが、そこにルークが加わったことで最高のバランスが生まれました。若手選手や外国人選手が迷っているとき、ルークはかつてのAJ(アンドリュー・ジョーンズ氏の愛称)と同じように、経験に基づいた言葉で彼らを導いてくれます。
野球は『自信のスポーツ』です。どんな名選手でも、10回のうち7回は失敗する。だからこそ、自分を見失わないための強い自信が必要なのです。ルークは選手たち『君はいい状態だ、自信を持っていい』と言います。彼が物事をシンプルに整理し、『大丈夫だ』と背中を押す。その一言が、どれほど選手たちを救っているか。彼のような存在がそばにいることは、今の楽天イーグルスにとって極めて重要なことなのです」

“データ”と“眼力”が交差するモダン・スカウティング
このように、これまでスカウトとしてチームに大きく貢献してきたホワイト氏が、選手を見極める際、最先端の数値以上に重んじるのが、選手の「Makeup(人間性)」だ。
現代のスカウティングにおいて、トラックマンやホークアイが弾き出す数値は無視できない存在だ。しかし、ホワイト氏はあえて、その先にある領域を重視する。データを確認した上で、その選手が日本という異国の地で立ち向かえる「人間性」を持っているかを自らの眼で見極めるのだ。
「今の時代、打球速度やスピン量を調べるのは簡単です。しかし、データは『その選手が過去に何をしたか』は教えてくれても、『日本の未知なる環境で壁にぶつかった時、どう振る舞うか』までは教えてくれません。そこで必要になるのが、スカウトの眼力と徹底的な調査です。私は米国のコーチや関係者と対話を重ね、彼らの人間性を深く理解するよう努めています。なぜなら、日本で成功を分けるのは、究極的には『アジャストする勇気』があるかどうかだからです」
その象徴的な例が、昨季のボイト選手だ。データ上ではメジャー本塁打王のパワーを証明していても、日本の執拗な外角攻めやフォークボールに苦しむ時期があった。
「日本の投手レベルは世界最高峰であり、攻略にはスタイルを根底から変える必要に迫られることもあります。ルークは昨季、苦境に直面した際、自らトレードマークだった大きなレッグキック(足を上げる動作)を止めるという決断を下しました。
実績あるベテランが、自分の成功体験を捨ててまで形を変える。データだけを見れば『不調』と片付けられる局面ですが、私のスカウトとしての眼が捉えたのは、彼の『生き残るための知性と柔軟性』でした。これこそが私の重んじる『Makeup』の本質です。データが示すポテンシャルを、現場で『結果』へと変換できるのは、こうしたアジャストの才能を持つ選手だけなのです」

ホワイトから楽天イーグルスファンへ
最後に、ホワイト氏は楽天イーグルスファンへ向けて「いつもチームを応援していただき、ありがとうございます。今年のチームは攻撃、守備、そして投手陣も大幅に強化され、エキサイティングなシーズンになるはずです」と力強く語り、「ファンの皆さんと共に、この素晴らしい一年を楽しめることを私も楽しみにしています」と笑顔を見せた。
取材・文:髙木隆
