あれは鈴木大地内野手がプロ入りする前、大学2年が終わろうとしている冬の事だった。オフの日に、仲間たちと関東の遊園地に遊びに行った時に、異様なオーラを放つ男の姿を見つけた。服の上からでも、はっきりとわかる強靭な肉体。そしてテレビでよく見る顔に、すぐに井口資仁内野手であることが分かった。トイレに入ったのを確認すると、その外で出てくるのを待った。そして声を掛けた。「マリーンズの井口選手ですか? 握手をしてください」。ニコリと微笑まれ、強く手を握ってくれた。
「人生って不思議ですよね。あの時はまだプロ入りなんて夢のまた夢の話で、思ってもいなかった。ただ、純粋に憧れのプロ野球選手と握手をしたい。それだけだった。まさか同じチームでプレーをすることになるなんて夢にも思っていませんよ」
月日は流れた。鈴木は11年10月27日に行われたドラフト会議で千葉ロッテマリーンズに3位指名を受け、入団をした。あの日、握手をしてもらった井口とチームメートになった。ふとした時、その話をしてみた。「ああ、なんか覚えている。トイレの前で大学生ぐらいの人に声を掛けられた事をね。そうか、あれが大地だったのかあ」。そう言って笑ってくれた。1年目は62試合の出場。2年目の13年にフル出場をすると14年からキャプテンを務め、マリーンズの看板選手までに成長をした。そして今シーズンをもって大学2年のあの日、握手をしてもらった憧れの大先輩は引退をするこ...