第100回全国高等学校野球選手権記念大会が開幕した。今年も甲子園で高校野球の頂点を巡り、激闘が繰り広げられている。夢見た舞台へ辿り着くために、球児たちはどれだけの鍛錬、挑戦、葛藤を積み重ねているのだろうか。現役プロ野球選手の高校時代を振り返る連載第2回は、タレントそろいのチームにあってもひときわ光る才能で魅せる上林誠知選手(現福岡ソフトバンク)。攻守に躍動する姿で上昇曲線を描きながら、プロ入り前には困難が待ち受けていた。プロ入り後も度々、自責の念を言葉にするのは、理想の高さゆえ。それでも進化を続けるため、求道者のごとく信念を曲げることはない。
高校最終学年時にはまった落とし穴
甲子園は幾多のスターを生み出してきた。高校生活最後の舞台で大きく飛躍する選手は多い。しかし、甲子園は必ずしもスターを生み出すわけではない。時として、ある選手にとっては、大きな試練となって降りかかってくる舞台でもあるのだ。
福岡ソフトバンクのレギュラーに定着した上林誠知選手は、甲子園での苦い思い出を発奮材料にしてきた。「思い出したくないですね。特に3年生になってからの1年は苦しいことばかりでした」。
上林選手が世間に名を知られるようになったのは、仙台育英高校2年夏の甲子園からだ。2年生ながら4番を務め、打率.455をマーク。卓越したバットコントロールで広角に長打を量産し、足で魅せる守備、そして、肩と3拍子が揃った中堅手として注目を浴びた。新チームになってからキャプテンを務めて東北大会、神宮大会を続けて制覇。当時は大阪桐蔭高校の森友哉選手(現埼玉西武)と並び称されていた...