打者を打ち取ることなくアウトを奪える、“牽制”という妙技
投手がアウトを取る方法は、必ずしも打者を打ち取ることだけではない。走者の虚を突く牽制球を投じて、帰塁を許さずに刺殺を勝ち取るプレーもまた、投手にとっては自らを助けることになる、非常に重要な技術の一つといえよう。
ただし、狙って牽制でアウトを取ることは非常に難しく、シーズンを通しても投手が牽制でアウトを奪う回数は決して多くはない。だからこそ、見事な牽制によってランナーを仕留めたシーンの価値は、非常に高いという考え方もできるはずだ。
今回は、2023年のパ・リーグにおいて牽制でアウトを取ったシーンのうち、とりわけ投手の高い技術が感じられた3つのプレーをピックアップ。1.2秒というわずかな時間に詰め込まれた高度な駆け引きの様子を、パーソル パ・リーグTVの映像とともに振り返っていきたい。
板東湧梧投手(9月10日 福岡ソフトバンクVS東北楽天)
板東湧梧投手はこの試合で先発投手を務めたが、初回から2本のタイムリーと押し出し四球で3点を失う、苦しい立ち上がりを強いられた。直後の2回も先頭の小深田大翔選手に内野安打で出塁を許し、2023年の盗塁王に輝いた韋駄天にプレッシャーをかけられる展...
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