大ベテランは自らを責めていた。12月15日、契約更改を終え、ZOZOマリンスタジアムの会見場に姿を現した福浦和也内野手は何度も「欲が出てしまった」と言って、眉間にしわを寄せた。貫いてきた自らのポリシー。それが今季、わずかばかりの事だが、揺れ動いてしまった。それがどうしても許せなかった。だから、オフは自問自答の日々を繰り返した。
「例えだけど、今年はアウトコースにボール一つ外に外れているボールを打ってしまった。ファウルにするべき球を前に飛ばして、ゴロアウトにされてしまうケースがあった。自分の中では分かっているつもりでも、本能のどこかで『結果が欲しい』という欲が出てしまったのだと思う。チームのためにファウルで粘って、最後は四球でいいので出塁をしなくてはいけないのに、前に飛ばしてアウトになってしまった。それが許せなかった」
2000本安打まであと68本。周囲からは偉業達成への期待の声が溢れる。それでも福浦は一貫して「チームが勝てばそれでいい。四球でいいので出塁をしたい。ヒットを狙うつもりはない」とクールな表情で回答をし続けていた。ただ、今年は石垣島での春季キャンプで左足を痛め、いきなり出遅れた事で狂いが生じた。自らの心の緩みがこの躓きを生んだと捉えた男は悔い、悔み、結果的に大事にしていた『静の心』が...