星野仙一氏とともに追い求めた情熱を再び東北へ。ダレル・ラズナー国際スカウトインタビュー

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2009年にニューヨーク・ヤンキースから楽天イーグルスへ入団したラズナー氏。現役時代は先発、そしてクローザーとしてマウンドに上がり 、引退後はその豊富な経験を活かして国際スカウトに就任【©PLM】
2009年にニューヨーク・ヤンキースから楽天イーグルスへ入団したラズナー氏。現役時代は先発、そしてクローザーとしてマウンドに上がり 、引退後はその豊富な経験を活かして国際スカウトに就任【©PLM】

 楽天イーグルスの国際スカウトとして、長年にわたりチームを支え続けているダレル・ラズナー氏とデリック・ホワイト氏。今回は、彼らのキャリアやそれぞれから見た楽天イーグルスの外国人選手について聞いた。

 前編で焦点を当てるのは、ラズナー氏だ。現役時代は精密なコントロールと熱い投球でファンを魅了し、2013年の球団初のリーグ制覇の際には、クローザーとして17セーブを挙げるなど絶対的な守護神として躍動。現在は国際スカウトという立場で、再び頂点を目指すチームをサポートしている。

自身の経験から得た気づき。スカウティングで重視しているコトとは

 2014年に選手からスカウトに転身したラズナー氏。彼は自身の経験から、日本野球の特質を「展開の速さ」と「選手の総合力」という言葉で分析する。

「日本でのプレーは、私に野球という競技の新たな側面を教えてくれました。一言で言えば、それは “it’s a much faster game(より展開の速い野球)”です 。機動力やコンタクト能力が高い選手がそろい、緻密な戦略にもとづくスピード感あふれる野球 。こうした緻密で隙のない環境は、選手を“more well-rounded(より総合力の高い選手)”へと進化させてくれます。日本のコーチングスタッフは驚異的で、選手を全方位的に成長させてくれます。私自身、日本に来る前よりも、日本を離れるときの方が投手として、そして人間としてより完成された存在になれたと実感しています」

 また、現在のスカウティングにおいて、技術に加えて「変化し、文化にアジャストする能力」を重視しているといい、「日本の文化を快く受け入れ、学ぶ意欲があるかどうか 。スマートで教養があることを重視しています 。例えば、今年獲得した2人のドミニカ人投手のように、他国でのプレー経験がある選手は、新しい環境への適応という面で大きな強みを持っていると考えています」と説いた。

ラズナーから見る、新加入のウレーニャとコントレラス

 今季の編成において、ラズナー氏は「先発ローテーションの厚みを作ることが最優先だった」と明かし、その狙い通りに獲得した2人の右腕について、こう語る。

「まずホセ・ウレーニャですが、彼は実績十分でプロフェッショナルな投手です。とにかく負けず嫌いのナイスガイで、毎日誰よりもハードに練習に取り組みます。彼を獲得した一番の理由は、その経験と『周りを助けたい』という強い意欲にあります。ピッチングの質も非常に高く、彼なら必ずチームを助けてくれる、そう確信しています」

アップに取り組むメジャー通算44勝の右腕、ホセ・ウレーニャ投手。最大の武器は、昨季平均154キロを計測した高速ツーシーム。打者の芯を外してゴロの山を築く投球スタイルが持ち味で、MLB通算1000イニング以上を投げ抜いたタフさを兼ね備える【©PLM】
アップに取り組むメジャー通算44勝の右腕、ホセ・ウレーニャ投手。最大の武器は、昨季平均154キロを計測した高速ツーシーム。打者の芯を外してゴロの山を築く投球スタイルが持ち味で、MLB通算1000イニング以上を投げ抜いたタフさを兼ね備える【©PLM】

 一方のロアンシー・コントレラス投手については、「ウレーニャに比べるとまだ若く、少し荒削りな部分もあります」としつつも、「彼もまた素晴らしい成功体験を持っていて、持っているボールの力は抜群です。ベテランのウレーニャと、若さのあるコントレラス。この2人がそろうことで、チームに非常にダイナミックな勢いが生まれるはずです」 と期待を寄せた。

アップに取り組む最速158キロの右腕、コントレラス投手。最大の武器は、威力ある直球とキレ味鋭いスライダー。高い奪三振能力を誇る本格派の投球スタイルで、先発ローテーションの一角として期待される【©PLM】
アップに取り組む最速158キロの右腕、コントレラス投手。最大の武器は、威力ある直球とキレ味鋭いスライダー。高い奪三振能力を誇る本格派の投球スタイルで、先発ローテーションの一角として期待される【©PLM】

目標はただ一つ、再び東北にチャンピオンシップを持ち帰ること

 ラズナー氏が2009年に楽天イーグルスへ入団してから、今年で18年目のシーズンを迎える。選手からスカウトへ、立場こそ変わったものの、これほど長きにわたってチームへ献身するラズナー氏を突き動かすものは一体何なのだろうか。その答えは、彼が大切にする「ロイヤリティ(忠誠心)」にある。

「ここ(楽天イーグルス)は『ファミリー』です。ファンも、スタッフも、皆が家族のように自分たちを温かく受け入れてくれました。

 私は『忠実であれ』と育てられてきました。誰かが自分に忠誠心を示してくれたなら、自分もそれを全力で返し、報いたい。東北のファンの皆さんもそうでした。私たち家族をとても大切にしてくれたのです。だからこそ、デリックと私は毎日話をしています。『もっと良くなりたい、この組織が勝つのを助けたい』と。私たちの目標はただ一つ、再び東北にチャンピオンシップを持ち帰ることです」

長年、楽天イーグルスの国際スカウトとしてチームを支え続けるデリック・ホワイト氏(左)とダレル・ラズナー氏(右)。その確かな眼力で有力な外国人選手を次々と発掘。現場との厚い信頼関係を築き、チームを支える【©PLM】
長年、楽天イーグルスの国際スカウトとしてチームを支え続けるデリック・ホワイト氏(左)とダレル・ラズナー氏(右)。その確かな眼力で有力な外国人選手を次々と発掘。現場との厚い信頼関係を築き、チームを支える【©PLM】

星野仙一氏から学んだ“戦士の心得”

 そして、18年の中で、特にラズナー氏の記憶に深く刻まれているのは、2013年に共に戦った星野仙一元監督の姿だ。同年、守護神として、球団初のリーグ制覇に大きく貢献したラズナー氏は、当時懐かしそうに振り返った。

「あの年、私たちは星野監督のもとで一丸となって戦っていました。星野監督というリーダーが私たちを導いてくれた。彼のためなら、私は勝つためにどんなことでもしたでしょう。彼は常に私たちに敬意を払い、親切に接してくれました。もちろん妥協を許さない厳しさはありましたが、常に公平でした。だからこそ、心から信頼できたのです。

 私にとって星野監督は、まさに『チャンピオン』であり『競争者』の象徴です 。グラウンド上の彼は凄まじい闘争心を持った『戦士』そのものでしたが、一歩外に出れば一転して『親切な紳士』でした。今季のチームには当時のように若い選手とベテランが混ざり合い、互いをサポートし合う雰囲気があり、2013年と似たような手応えを感じています。あの時、星野監督とともに追い求めた情熱を再び東北に、という想いが、今の私のスカウト活動を突き動かしているのです」

ツーシームの握りについて意見を交わす、前田健太投手と荘司康誠投手。若手とベテランが混ざり合い、互いをサポートし合う雰囲気がブルペンでも感じられた【©PLM】
ツーシームの握りについて意見を交わす、前田健太投手と荘司康誠投手。若手とベテランが混ざり合い、互いをサポートし合う雰囲気がブルペンでも感じられた【©PLM】

ラズナーから楽天イーグルスファンへ

 そしてインタビューの最後に、楽天イーグルスファンに向けて、こう口にした。

「東北のファンの皆さんは、日本、そして世界で最高のファンだと私は思っています 。私や私の家族にとても親切にしてくれました 。2013年に優勝できたのも、ファンの皆さんのおかげです 。私たちはファンの皆さんの応援から力をもらっています 。スタジアムが活気にあふれ、皆さんの興奮を感じるとき、私たちは皆さんのために勝ちたいと強く思うのです 。今年もぜひスタジアムに足を運んでください」

取材・文:髙木隆

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