中南米で日本プロ野球への関心が高まっているワケ。現地メディアに映る、普及の背景と“意外な共通点”

パ・リーグ インサイト 後藤万結子

レオンテ・ランディーノさん ©PLM
レオンテ・ランディーノさん ©PLM

 日本プロ野球界では、これまで多くの中南米出身選手が活躍し、その名を球史に刻んできた。また、今年3月に開催された「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™」では、準々決勝で日本を下したベネズエラが初優勝を果たしたこともあり、日本の野球ファンにとって中南米野球がより身近なものになっている。

 そこで気になるのが、中南米のメディア・野球ファン・選手から見た日本プロ野球だ。今回は、中南米メディアで長年にわたって世界中の野球選手を取材してきたレオンテ・ランディーノさんに、日本プロ野球普及の現状や注目の日本人選手など、リアルな声を聞いた。

中南米で日本プロ野球が浸透する3つの理由

 この日、ネフタリ・ソト選手(千葉ロッテ)の取材を行うべく、ZOZOマリンスタジアムを訪れていたランディーノさん。今季から千葉ロッテのキャプテンに就任し、6月にはNPB通算200本塁打を達成するなど、日本で素晴らしいキャリアを積むソト選手が抱く母国への想いや、日本でのプレーを志す中南米選手に向けたメッセージなどを現地のファンに届けるべく、インタビュー動画の撮影を行っていた。

ソト選手にインタビュー中のランディーノさん ©PLM
ソト選手にインタビュー中のランディーノさん ©PLM

 デジタルメディアの発達により、このように映像として、選手の姿を母国に届けられるようになったことに加えて、2024年から中南米地域ではパ・リーグ主催試合の放映・配信がスタート。同地域の野球ファンと日本プロ野球とを結びつけるタッチポイントは増えているが、日本プロ野球は現地でどれだけ浸透しているのだろうか。ランディーノさんは「昔と比較すると、確実に関心が高まっています」と明言し、その要因をこう語る。

「まず、放映・配信環境が整ったことが非常に大きいですね。パ・リーグの試合は気軽に見ることができますし、各選手の細かい成績もリアルタイムで知ることができます。昔は、こういった情報は遅れて届くものでしたからね。現在は、まだ日本プロ野球の大枠を理解してもらう段階にありますが、今後は、特定のチームを応援したり、選手個人を応援したりできるようになっていくと思います」

 また、AIや翻訳アプリを通じて、誰もが簡単に翻訳できるようになったことも要因の一つだとランディーノさんは考える。加えて、「これまでのレジェンドたちの活躍も欠かせない」とし、埼玉西武をはじめとするNPB3球団で活躍したアレックス・カブレラ氏、そして外国人枠の選手としては史上初となる日本通算2000安打を達成したアレックス・ラミレス氏の名前を例に挙げた。

「カブレラは、NPBに在籍している間も、オフはベネズエラのウインターリーグでプレーしていたので、『日本でホームラン50本打ったらしいぞ!』など、彼に関するニュースはベネズエラにも届いていました。そして、ラミレスが日本プロ野球名球会入りしたことも、現地では大きなニュースでした。中南米には多くのスーパースターがいますが、日本球界であのレベルまでたどり着いたのは、現時点で彼一人だけですからね。彼らレジェンドの功績も重要な要因です」

 このように、さまざまな要素が積み重なったことで、少しずつではあるものの、着実に日本プロ野球の魅力は伝わっているようだ。ランディーノさん自身も、普及を実感した出来事があったそう。

「今年のWBC開催前、出場各国のスタメンについて、ベネズエラ、プエルトリコ、ドミニカ、メキシコ、キューバでファンにアンケートを行いました。企画自体とても盛り上がりましたが、私は日本代表について、これほど多くの人が意見するとは思いもしませんでしたね。『この選手がファーストを守るべきだ』『岡本和真はファーストか、サードか。それはなぜか』などといった意見が活発に交わされました。これは、中南米の国民に日本プロ野球が届いている証拠だと言えます」

中南米野球と日本野球の意外な共通点とは

取材中のランディーノさん ©PLM
取材中のランディーノさん ©PLM

 では、中南米の野球ファンは、日本のプロ野球をどう見ているのだろうか。

 ランディーノさんは「親近感を持って見ている」と話し、「『本当に?』と思うかもしれませんが、実は中南米の野球と日本の野球はプレースタイルがよく似ているんです」と明かした。日本の多くのファンは、中南米野球に対して“パワーヒッターの宝庫”というイメージを持っているに違いない。しかし、本質はそうではないという。

「パワーヒッターは、中南米からNPBへ渡った選手に限ったことです。NPBのチームは、昔からカブレラやラミレスなど、いわゆる“大砲”を多く獲得しているので、日本のファンはそのようなイメージを持っているんです。確かにパワーに優れた選手は日本と比べて多くいます。でも、実際のカリビアン・ベースボールは、ルイス・アラエス(サンフランシスコ・ジャイアンツ)のようなコンタクトに優れた選手や元MLBの名遊撃手、オマール・ビスケルのような守備型の選手が多いです。中南米ウインターリーグの覇者を決める『カリビアン・シリーズ』ではバントやエンドランなど勝ちに徹した手堅い作戦も積極的に使うので、日本の野球と似ている部分も多いんですよ」

 また、日本プロ野球が浸透しているのはファンの間だけではない。最近では、中南米でプレーする選手たちの中でのNPBの位置づけにも、変化が生まれ始めている。

「今日におけるラテン系選手たちのNPBへの関心は、昔と比べて高まっていますし、これは我々メディアにとっても、興味深いことです。正直、昔は日本のチームと契約することをネガティブに捉える選手もいました。しかし現在は、多くの選手たちが大きなチャンスと捉えています。私に対しても多くの選手が『俺は日本に行きたいんだ!』と言ってきますよ。昔はそんな声は聞こえませんでしたからね」

 実際に、アンドレス・マチャド投手(オリックス)やリバン・モイネロ投手(福岡ソフトバンク)、アリエル・マルティネス選手(北海道日本ハム)、アレクサンダー・アルメンタ投手(福岡ソフトバンク)、ライデル・マルティネス投手(巨人)、アルベルト・アブレウ投手(中日)など多くの選手がNPBで安定した結果を残すことで信頼を勝ち取り、母国の代表入りを果たすケースも増えている。以前は、MLBでプレーすることだけを目標に掲げる選手も多かったが、こうして日本プロ野球が普及し始めた現在、キャリアの選択肢が広がりつつあるようだ。

ズバリ、注目の日本人選手は?「将来的にMLBで活躍できる」

 最後に、各国を飛び回り、日々世界の野球を追い続けているランディーノさんに、注目の日本人選手をたずねると2人の名前が挙がった。

「まず、牧秀悟(横浜DeNA)です。彼は安定感があり、相手がどんなピッチャーであってもヒットを打てる。彼こそが、次にMLBで活躍できる日本人選手だと思います。そして、万波中正(北海道日本ハム)にも注目しています。万波も非常に多才な選手で、チームに大きく貢献していると思います。新庄剛志監督が率いる素晴らしいメンタリティを持ったチームで起爆剤になっていますし、彼もまた、将来的にMLBで活躍できる選手になり得ると思っています」

取材中のランディーノさん ©PLM
取材中のランディーノさん ©PLM

 放映・配信環境の整備やテクノロジーの進化、そしてレジェンドたちの功績によって、かつては縁のない、遠い国のリーグだった日本プロ野球界が身近なものとなり、中南米の選手たちにとっては「新たな挑戦の舞台」に変わりつつある。今後も、パ・リーグをはじめNPBで才能を開花させる中南米出身選手がますます増えていくことに期待したい。

記事提供:パ・リーグ インサイト

特集
パ・リーグ.com ニュース

中南米で日本プロ野球への関心が高まっているワケ。現地メディアに映る、普及の背景と“意外な共通点”