前後期60試合ずつ戦う台湾プロ野球。開幕から4カ月あまり、すでに前期シーズンを終え、後期シーズンも5分の1が消化した。現地から台湾プロ野球の情報をお届けしているこのコーナーでは、今回もここまでの主なトピックや注目選手をご紹介していこう。
昨季は、一試合平均観客数が10,373人と、リーグ36年目にして初めて、1万人台の大台に乗った台湾プロ野球だが、今季も動員は好調だ。前期は、リーグ随一の人気を誇る中信兄弟の成績低迷の影響が出ているものの、今季から新本拠地「アジア太平洋国際野球訓練センター メイン球場」を使う統一ライオンズが大きく来場者を増やし、今季も360試合中219試合消化時点で平均10,118人と、ほぼ昨年並で推移している。
日本プロ野球よりひと足早く、7月18日、19日に台北ドームで開催されたオールスターゲームは、2日間連続で4万人の大入りとなった。「エンタメ路線」の台湾プロ野球オールスター、19日の第2戦、7回裏には、中信兄弟・平野恵一監督と、富邦・後藤光尊監督による元オリックス二遊間が実現、平野監督が身軽な動きで5-4-3の併殺を完成させるという、日本のファンにとっても見逃せないシーンも見られた。
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強力投手陣軸に打力、走力高めた味全が前期を制す! 後藤光尊監督率いる富邦も健闘
前期シーズンを振り返っていこう。6月20日、前期の優勝マジックを1としていた味全ドラゴンズは、台湾南部、高雄市の澄清湖球場に乗り込み、ビジターで台鋼ホークスと対戦した。
味全のドリュー・ギャノンと、かつて東京ヤクルトでもプレーした台鋼のデビッド・ブキャナンの投げ合いとなったが、ピッチャーが替わった8回表、味全は一挙3点を奪うと、9回にも1点追加、最終回は、WBSCプレミア12の「胴上げ投手」、林凱威が三者凡退に抑え、2023年後期以来、6度目の半期シーズン優勝を果たした。
前期、味全の強さは圧倒的だった。4月24日に単独首位に立つと、連勝をチーム最長タイ記録の9に伸ばした5月26日、優勝マジック17を点灯させ、そこから危なげなく逃げ切った。優勝を決めるまでの55試合で37勝18敗、勝率は2勝1敗ペースを上回る.673をマークした。
元々、安定した投手力を誇るチームだが、来台6年目のギャノンに加え、統一から移籍のメルセデス、楽天モンキーズから移籍のマルチネス、新加入のジョン・ガント、そして現在は台湾人登録となったウッドールと、優勝まで55試合中48試合で「外国人」投手が先発し、先発防御率は圧巻の1.88で、福岡ソフトバンクへ移籍した台湾人エース・徐若熙の穴を感じさせなかった。また、台湾人投手主体の救援陣もリーグトップの安定感を誇った。
一方、近年、課題となっていた打撃陣は、主砲のギリギラウ・コンクアンが開幕直後にケガで長期離脱、陳子豪が不振に苦しんだなか、6月の月間MVP・郭天信のほか、主力の李凱威、張政禹、朱育賢らが活躍、24歳の王順和もブレイクを果たした。チーム打率.250は2位ながら、本塁打31本、得点圏打率.287はリーグ1位に。牽制やプレートを外す行為も2回(従来は3回)までとなり、拡大ベースが導入された中、55試合で66盗塁を記録、リーグ1位の227得点、215打点を挙げた。
葉君璋監督は優勝決定後、「全ての選手、スタッフ、スコアラーの皆がキープレーヤーだ。みんなの努力でこの半期優勝を勝ち取れた」と目をうるませながら感謝した。
今回の味全の優勝を支えた一員には、古久保健二・巡回統括コーチ、そしてアナリストの井尻哲也氏の両氏も含まれる。昨季、監督として楽天モンキーズを台湾王者に導いた古久保氏は契約延長を見送られたが、豊かな経験を評価していた味全がオファーした。
二軍選手育成が主な任務だが、同時に一軍の状況も把握しながら一、二軍の橋渡し役としてチームを強化している。また、東大野球部出身で、かつて北海道日本ハムでも活躍したアナリストの井尻氏は、データ分析を通じたアドバイスで、高い潜在力を持つドラゴンズの選手たちの力を引き出した。

一方、優勝には届かなかったが、このオフ、二軍監督から一軍監督に昇格した後藤光尊監督、新任の森野将彦ヘッド兼打撃コーチ、的山哲也バッテリーコーチら、日本人指導者が一、二軍合わせて史上最多の7名となった富邦は、前期、チーム史上半期最多の34勝を挙げ、5ゲーム差の2位と大健闘。今季のチームスローガン「不一樣了(変わった)」通り、生まれ変わった。
高いポテンシャルを持つ選手が揃いながらも、長年投打が噛み合わず、2016年の球団買収以来、ほぼ一貫して成績が低迷してきた富邦だが、2024年10月の林威助・副GM就任後、チーム改革を進めてきた。
後藤監督、森野ヘッドの「同級生」コンビは、選手や台湾人コーチとのコミュニケーションを重視すると共に、一軍、二軍の指導の一本化、情報共有を通じ、特に若手野手に多くの機会を与え、モチベーションを高めた。また、基本プレーの徹底、「強者の意識」を伝え、勝利への執念を根付かせた。
投手では李東洺が、台湾人投手では史上5人目となる前期10勝とブレイク、昨季途中加盟、台湾3シーズン目となる鈴木駿輔は制球が大きく改善し、ローテーションの柱の一人として奮闘している。後期に入りチーム状態はやや下り坂だが、過去、幾度も失速した「鬼門の8月」を乗り越えれば、プレーオフ進出、さらには後期優勝争いにも絡んでいけるはずだ。
一昨年は台湾王者、昨季も年間勝率1位となった平野恵一監督率いる中信兄弟は、今季は開幕15試合で12敗というまさかのスタート。チーム防御率は4.23と唯一の4点台に沈み、打撃も5月までは低迷した。6月に入り打線が奮起、月間勝率5割を達成したが、結果、前期は59試合(1試合未消化)、20勝37敗2分、首位に17.5ゲーム差の最下位に終わった。
ただ、苦しい戦いのなか、若手を積極的に起用、張仁瑋、張士綸といった野手の成長に加え、選手達のプロ意識の高まりに手応えも感じているようだ。熱狂的なファンが多いチームだけに平野監督以下、新任の西田明央、後藤駿太両コーチのプレッシャーは大きいだろうが、後期は、より多く笑顔を見たい。

個人成績上位にはWBC台湾代表、日本の皆さんにもおなじみの顔が
ここまでの個人成績も見ていこう。まずは打撃部門だ。目下、打率.310、83安打で、打率と安打数でトップに立っているのは2024年に埼玉西武の秋季キャンプに参加した曽子祐(台鋼)だ。打率2位には昨季の首位打者で、元埼玉西武のおなじみ、呉念庭(台鋼)が.307でつけている。
本塁打は、元メジャーリーガーでWBC台湾代表の張育成(富邦)と、かつて中日、オリックスでプレー、3年連続のHRキングを狙うスティーブン・モヤ(台鋼)が12本で並んでいる。モヤはすでに62打点を挙げており、39打点で2位の蘇智傑(統一)、38打点で3位の王柏融(台鋼)に大差をつけている。
盗塁はWBC代表の陳晨威(楽天)が20個でトップ。19個の張政禹、17個の郭天信の味全コンビが追っている。
投手部門、防御率は、かつて北海道日本ハムに在籍もケガで一軍登板のなかったジョン・ガントが1.42でトップ。台湾投手では、このオフに楽天から移籍したサイドハンド黄子鵬(台鋼)が1.81で3位、投球回数もリーグ2位の92回1/3と、大型契約に応えている。
ハーラーダービーのトップに立つのは上述の李東洺で10勝、リーグ12年ぶりの台湾人最多勝投手が生まれるかに注目が集まっている。また、かつて巨人やロッテでプレーしたメルセデス(味全)は2位タイの8勝、防御率も2.13(5位)と、味全の躍進に貢献している。BCリーグを代表する右腕だった鈴木駿輔(富邦)は7勝、防御率2.14と、元メジャーリーガーも名を連ねる投手ランキングで上位と健闘中だ。
セーブは、リーグの通算セーブ記録をもつ陳韻文(統一)のケガにより、守護神に抜擢された22歳右腕、最速155キロを誇る鍾允華(統一)が20セーブで目下1位、曽峻岳(富邦)が19セーブ、林凱威(味全)が18セーブと、WBC代表組が追っている。
ホールドでトップに立つのは、18ホールド、元阪神の呂彦青(中信)だ。近年は「勤続」疲労でパフォーマンスが落ちていたが、今季は防御率1.41、WHIPは0.81と復活、苦しいブルペンを支えている。また16ホールドをあげ3位で並ぶのは、こちらもWBC代表、元NPBの張奕(富邦)と陳冠宇(楽天)だ。楽天はクローザーの朱承洋がベースカバーの際に負傷、離脱したため、陳冠宇は代役守護神としての起用が増えそうだ。
文・駒田英(情報は7月27日時点のもの)
