平日ナイターに商機あり。インバウンド向けチケット好調のバファローズの戦略とは

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 2025年の訪日外客数(訪日外国人観光客)は4,268万人を記録し、前年比15.8%増と過去最多を突破した。地域別では韓国、中国、台湾、アメリカ、香港、タイ、オーストラリアなどからの旅行者が大半を占めている*。これに伴い、パ・リーグ6球団の主催試合のインバウンド向け観戦チケットの販売数が昨年の実績を上回り、順調な推移を見せている。

*参考:日本政府観光局「訪日外客統計2025年12月推計値」

 かつてプロ野球における外国人ファンの需要といえば、台湾や韓国出身選手などのアジア圏のスター選手を目当てにした来場が主流であった。しかし、ここ1〜2年でその客層には確かな変化が起きている。

 特に大阪・京都といった関西圏では、日中に神社仏閣の参拝や観光を済ませた欧米豪からの旅行者が、空いた夜の時間を満たすための「ナイトエンターテインメント」として、都市型ドームである京セラドーム大阪でのナイター観戦を選ぶケースが急増している。これは単なる観光地巡りから日本独自の文化を肌で体験する「コト消費」へと、ニーズがシフトしていることの現れと言える。

 このインバウンド需要の変容と今後の対策について、ライブエンターテインメントやスポーツのインバウンド向けチケット販売を展開し、パ・リーグ6球団の訪日外国人観光客に向けたチケット販売を行う株式会社Tickets in Japanの薗田好豊さんと、オリックス・バファローズでチケット企画を担当する阿部優輝さんが語った。

平日夜の予定を埋める。「プロ野球のナイター」へのニーズの高まり

――まず、外国人観光客の方がネットでオリックス戦のチケットを買おうとすると、バファローズ公式チケットサイトの「オリチケ」と、訪日外国人観光客に向けに特化した「Tickets in Japan」に行き着くことになると思いますが、それぞれの違いや特徴をお聞かせください。

阿部さん:公式チケットサイト「オリチケ」内に、インバウンド向け販売サイトを作成しました。外国人の方でも購入できる会員登録不要のサイトです。ほぼ全てのオリックス主催一軍試合・席種を取り扱っていて、座席も選択することができ、幅広い選択肢からお選びいただけるのが特徴です。

薗田さん:「オリチケ」とは異なるチケット販売サービス「Tickets in Japan」は、株式会社Tickets in Japanが運営する訪日外国人観光客に特化したサービスです。そもそも日本語版のWebサイトはなく英語・繫体字・ハングルの外国語に特化した多言語サイトで、UI&UX、海外決済、カスタマーサポートなど全ての機能が外国人専用になっています。

またチケットを販売するだけではなく、取り扱いのライブやスポーツの魅力を発信すべく、主催者様の皆さんに情報をいただき紹介記事を執筆しTickets in Japanサイトに掲載。さらにその記事をSNSや各種PRサイトで海外へ配信していくのが特徴です。

――近年のインバウンド需要のリアルと、市場や客層の変化について教えてください。

阿部さん:2010年代までは韓国や台湾などのアジア圏のお客様が中心という印象でしたが、ここ2年はアメリカ、カナダ、オーストラリアといった欧米豪のお客様が数字としても明らかに増えています。

――関西観光のルートに野球観戦が組み込まれているのでしょうか。

阿部さん:そうですね。大阪・京都の繁華街や関西国際空港から京セラドーム大阪までのアクセスがいいので、観光のルートとして組み込みやすくなっています。特に、京都の神社仏閣などは夕方に閉まってしまうため、旅行者の方々は「あいた夜の時間に何をするか」を考えています。その選択肢として、全天候型で夜に完結する「プロ野球のナイター」というコンテンツがうまくはまっているのだと思います。

しかも、外国人観光客の方は平日か週末かは関係ありません。平日ナイター開催のカードでも購入していただいています。

オリックス野球クラブ事業本部事業推進部チケット企画グループ 阿部優輝さん ©PLM
オリックス野球クラブ事業本部事業推進部チケット企画グループ 阿部優輝さん ©PLM

――Tickets in Japan側でデータやユーザーの動きを見ていて、バファローズの試合における傾向はいかがですか。

薗田さん:弊社のデータでもバファローズのチケット購入者はアメリカが44.6%、台湾が20.4%、オーストラリアが18%となっており、他球団に比べて欧米豪の割合が非常に高いのが特徴です。

阿部さん:おもしろい傾向ですよね。オーストラリアからの来場が多いというのが意外でした。

オリチケ側のデータとしては、春先には桜を目当てに来日するヨーロッパからのお客様の購入が急増し、夏に一度落ち着いて、秋の紅葉シーズンにまた増えるという、季節連動の動きも見られます。アメリカやカナダのお客様はもともと野球大国ですし、山本由伸投手や吉田正尚選手がかつて在籍した球団という認知を持って、ピンポイントで調べて見に来てくださるケースも多いですね。

――日本野球に精通したお客さんは、試合をじっくり見つつ、球場グルメや応援グッズも、という王道の楽しみ方を知っていそうです。

阿部さん:そうですね。そういったお客様にはユニフォームやタオルなどのグッズもよく売れています。

薗田さん:客席で名物球場グルメ「いてまえドッグ」を食べている外国人のお客様もよく見ますね。あのインパクトある見た目は写真映えしますもんね!

阿部さん:「いてまえドッグ」は男女問わず人気ですね。他には大阪らしいたこ焼きなども人気です。

顕在層は「オリチケ」、潜在層は「Tickets in Japan」で

――これまでバファローズが行ってきた「インバウンド施策」と球団の変化について教えてください。

阿部さん:試合日に球場へ行けば必ず外国人のお客様がいらっしゃるので、社内でもインバウンド向け販売の強化に対する関心は非常に高まっています。スタジアムでは、まずサイネージや案内などの英語表記を増やす対応を進めています。また幸いなことに、現在は英語での対応が可能なスタッフが一定数揃っており、現場でのソフト面の対応に生かされています。

現在、外国人のお客様向けにはあえて「デジタル発券」ではなく、窓口での「紙チケット引き換え」を採用していますが、これによってスムーズな導線が確保され、窓口での目立った混乱やトラブルも起きていません。席種としては、3塁寄りと3塁側を中心に割り当てることで、現場の混雑回避にも繋がっています。

――Tickets in Japanと連携したことでの手応えはいかがでしょうか。

阿部さん:球団単体では、英語以外の言語への対応や、海外特有の決済手段、また「買った後にどう球場へ行き、どう観戦するか」という細かなカスタマーサポートをカバーしきるのには限界があります。

球団側としては、すでにバファローズを認知している顕在層は自社の「オリチケ」へ、そして「Tickets in Japan」にはそれまで球団側がアプローチできていなかった潜在層を幅広く拾い上げていただくという、明確な住み分けが手応えとして見えています。

――相互補完的な関係性ができているということですね。Tickets in Japanに期待していることは何ですか?

阿部さん:Tickets in Japanさんには、単なるチケット販売に留まらず、海外ユーザーの視点に立って会場へのアクセスや観戦マナーを多言語で伝える「メディア」としての役割に期待しています。

薗田さん:まさにTickets in Japanもそこも意識しています。ただチケットを売るだけでなく、「日本のプロ野球を観るならTickets in Japanで情報を得てからいこう」と言われるような質の高いメディアへと成長させ、球場施設の紹介といったコンテンツも強化していきます。

 Tickets in Japanで紹介された「オリックス・バファローズの本拠地京セラドーム大阪の楽しみ方」 
Tickets in Japanで紹介された「オリックス・バファローズの本拠地京セラドーム大阪の楽しみ方」 

阿部さん:球団としてもそこに便乗して、球場観戦の魅力をどんどん発信していきたいですね。

株式会社Tickets in Japan ゼネラルマネージャー 薗田好豊さん ©PLM
株式会社Tickets in Japan ゼネラルマネージャー 薗田好豊さん ©PLM

――現状の課題は何でしょうか? 今後、日本のプロ野球をさらに強固なインバウンドコンテンツにしていくための展望をお聞かせください。

阿部さん:ハード面の課題で言うと、欧米豪からお越しのお客様の中には座席が小さいという問題があります。より良い観戦体験をしていただくために、今後どうしていくべきか検討をしています。また、「キャンセルや日程変更はできないのか」という文化的な習慣の違いによる問い合わせも一部ありますね。

薗田さん:Tickets in Japanでもキャンセル・払い戻しの問い合わせは一定数あります。例えば韓国は、日本のホテルや飲食店予約のように、プロ野球のチケット購入後、キャンセル料は発生しますが一定期間キャンセルできる文化のようです。ここは日本の文化をご理解いただけるよう海外のお客様に説明しています。ただ意外と日本のプロ野球のルールとしてキャンセル不可を受け入れてくださるお客様も多いんですよね。

阿部さん:確かにそうですね。また今後は、一過性の観光需要に終わらせないための「リピーター化」が大きな課題です。欧米豪の方々は「野球の試合そのもの」だけでなく、日本独自の鳴り物や応援団の熱気といった「応援文化」や、たこ焼きをはじめとする「球場グルメ」を含めた“体験”を求めて来られています。ドームという天候に左右されない強みを生かし、夜の時間を豊かにする日本のエンターテインメント文化として、さらに魅力を発信していきたいです。

薗田さん:今後、「練習見学付きチケット」のような商品や、ファームも含めたチケットを展開し、将来的にはプロ野球全体や、ほかのスポーツ、ライブエンターテイメントと訪日外国人観光客を繋げる大きなインバウンドサービスを構築し、持続的な日本のライブエンターテイメント&スポーツファン獲得に挑戦したいと考えています。

阿部さん:一緒に頑張っていきましょう!

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