「4勝3敗でいい。たまには負けたっていいんだよ」——。異国のブルペンで、若き投手たちにそう語りかける指導者がいる。台湾プロ野球(CPBL)・楽天モンキーズの一軍投手コーチ、川岸強氏だ。かつて楽天イーグルスでセットアッパーとして躍動した右腕は、戦力外通告や大ケガといったどん底の挫折から這い上がった「苦労人」でもある。自身の泥臭い経験と恩師たちの言葉を胸に、言葉の壁を越えて台湾の有望株たちといかに「対話」し、成長へと導いているのか。海を渡った日本人コーチの、知られざる奮闘の日々に迫った。
「もがいた」現役時代と、恩師たちからの言葉
川岸氏の野球人生は、決して順風満帆なエリート街道だったわけではない。中日ドラゴンズ時代にはケガに泣かされ、何をやってもうまくいかずに苦しむ時期があった。モチベーションが上がらず、トレーニングルームで暗い顔をしていた時のことだ。当時二軍トレーニングコーチだった塚本洋氏から「今日、気持ちが上がらないんだったら帰っていいぞ」と声をかけられた。
練習を早めに切り上げて帰ることに気が引けていた川岸氏に、塚本氏はこう続けたという。
「『1週間は7日間ある。4勝3敗で勝ち越せば成長できるから、たまには負けたっていいんだよ。明日頑張れ』って言わ...