第100回全国高等学校野球選手権記念大会が閉幕した。今年も甲子園で高校野球の頂点を巡る戦いから、多くの新たな物語が紡がれている。夢見た舞台へ辿り着くために、球児たちはどれだけの鍛錬、挑戦、葛藤を積み重ねているのだろうか。現役プロ野球選手の高校時代を振り返る連載第7回は、あらゆる方法でチームへの貢献を果たす西川遥輝選手(現北海道日本ハム)。高校では相次ぐ故障に才能の完全開花を阻まれたが、プロ入り後はそれも克服した。類まれな野球センスを存分に発揮し、走攻守のパフォーマンスでチームをリードする姿が多くのファンを魅了している。
希代のヒットメーカーを彷彿させる打撃
西川選手のことを初めて知ったのは、彼が智弁和歌山高校に入学して間もない春だった。和歌山県の春季大会で3試合連続を含む4本塁打。“スーパー1年生”の評判を耳にしたのが始まりだった。
当初、「またしても智弁和歌山っぽいスラッガーが登場してきたのだろう」と想像した。ところが、間もなくして練習グラウンドを訪ねると、そこにいたのは色白で小顔、華奢なスタイルながらハイレベルの走攻守がそろった、まったく智弁和歌山っぽくない選手だった。ただ、フリーバッティングの打球は勢いよく飛んではいかず、初対面の印象はそこまで強くはなかった。
一気に惚れ込むことになったのはそれから約3ヶ月後。夏の全国高等学校野球選手権大会だった。予選期間中の打撃練習で右手の有鈎骨(手の平下の手首寄りの骨)を骨折。普通なら夏欠場となるはずだったが「しっかり守って打席ではフォアボールでも選んで走ってくれたらいい」という高嶋仁監督の意向で、患部をサポーターとテーピングで固めて2回戦から強...