敵地とはいえ、そこは地元だった。ドラフト1位ルーキーの平沢大河内野手が放った打球が中前に落ちると、アウェーとは思えぬ温かい拍手が沸き起こった。18歳の若者は1塁ベース上でちょっとホッとした表情で右手を上げて、声援に応えた。8月17日のイーグルス戦。生まれ故郷である杜の都・仙台でのプロ24打席目に記念すべき初ヒットは生まれた。
「正直、ホッとしました。本拠地のマリンで打ちたかったという思いもありましたが、宮城で打てたのは良かったと思います」
家族ら10人を試合に招待をして迎えた初めての仙台での一軍の舞台だった。仙台育英時代のチームメートも「応援に行くよ」と駆け付けてくれていた。入団前からのマリーンズファンの弟・大剛くん(中学一年生)はライトスタンドから声援を送っていた。母と一緒にスタンドから応援をしていたリトルリーグ時代からのチームメートの父親はその瞬間、涙を流した。ここまで一流のプロ投手の前で、なかなか自分のスイングをさせてもらうことができず、戸惑い苦しんだ若者は、奇しくも多くの知り合いが見守る前で記念すべき第一歩を踏み出すことができた幸せを静かに...