2012年から埼玉西武のキャプテンを務めていた栗山巧選手は、昨オフ、その胸のCマークを浅村栄斗選手に譲った。まだ若く、キャプテンタイプではないと言われ続けた浅村選手も、人生初の肩書きに四苦八苦しつつ、昨季までとはひと味違う姿を見せてくれた。だが、栗山選手が埼玉西武に欠かせない存在であることは変わらない。キャプテンの座を退いたからこそ、今季は改めてそう思わされることも少なくなかったのではないだろうか。
栗山選手は今年で34歳。生粋の「神戸っ子」であるが、16年間埼玉西武一筋を貫いている。三振が少なく粘り強く、広角に打ち分けられる打撃、優れた選球眼、ここ一番での集中力。そして何より、徹底した自己管理によってシーズンを戦い抜くプロ意識の高さが、栗山選手の最大の魅力だ。その姿勢がチームに与える好影響は計り知れないほどで、グラウンド内外における栗山選手の貢献度を、単純な数字で表すことはできないだろう。
ただ、そんな確かな実力と「日本のジュード・ロウ」と称されるほどの端正なマスクを兼ね備えながら、いぶし銀のプレースタイルのためか、2015年までオールスターゲームの出場経験はなかった。しかし、2016年に初出場を果たすと、初打席で劇的な初本塁打を放つ。シーズン中はチーム事情に応じてさまざまな打順を任され、多くの制約がある中で黙々と自身の役割を果たしてきただけに、思いきりバットを振り抜いた末の豪快アーチは、まさに「プロ野球ファンの誰もが喜ぶ一発」となったと言って...