「目標として一軍で初登板というのはずっとシーズン前から言っていたので、それは達成できて、いろんな経験もできて学びもあった年にできたかなと思います」。
ロッテ高卒2年目の早坂響は、一軍公式戦デビューを含む9試合に登板し、経験を積むシーズンとなった。
25年に向け、シーズンオフの自主トレは「体作りっていうところを特にウエイトトレーニングとか、体重増加のところを特に重点的に取り組んだかなと思います」と体づくりに励んだ。
石垣島春季キャンプは「自分に集中して、自分の課題にも取り組めているかなと思います。具体的にフォームのところで、並進運動の練習をよくしていこうとやっているところです」と自身の課題と向き合い、全体練習後も“並進運動”の練習を室内練習場で長い時間行った。
「キャンプ入って、こうやっていろんな方々に見られている中でやってるっていうのもあって、そういう中でもっと人数多いと思うんで、やっていけたらいいなっていう風に思いました」と話し、「ファームだと外野入ってなかったので。あの人数でもワーっと思っていたので、さらに人が入ると思ったら、どんな風な景色なんだろうというのは気になりますね」と、一軍で本拠地・ZOZOマリンスタジアムのマウンドに上がりたい思いを口にした。
石垣島春季キャンプ打ち上げ後は、都城キャンプに合流。開幕もファームで過ごしていたが、5月11日にプロ初昇格を果たす。同日の西武戦でプロ初登板を果たすと、プロ2度目の登板となった同月14日の楽天戦では0-4の8回に登板し、先頭の代打・小郷裕哉を148キロのストレートで三邪飛に仕留めると、続く中島大輔を149キロのストレートでセカンドゴロ、最後は辰己涼介を149キロのストレートでセカンドゴロと、1イニングを3人で片付けた。
この登板から2日後の5月16日に一軍登録を抹消された。一軍登板を経て感じた課題と収穫について早坂は「真っ直ぐは自分の武器だと思うんですけど、それもしっかり前に弾き返されたりしたので、そこはまだ練習してレベルアップしていけないところかなと思いました」と明かした。
「四球、先頭打者とか、細かいことよりも四球を減らす、ファーストストライク取るとか、ピッチャーとしてのシンプルだけど難しいようなところを一番意識して、とにかくゼロで抑えていくことを意識してやっています」。
5月25日の楽天二軍戦は1イニングを10球、5月28日の巨人二軍戦は1イニングを9球にまとめるなど、「球数少なく終われればそれはそれで良いんですけど、それとプラスで変化球をいろんな場面で挑戦して投げたりとか、今まで真っ直ぐ一辺倒で行っていたところもあるので、そういったところも挑戦していけるようにと思っています」と、この時期は少ない球数で抑える試合が多かった。
四球が減少し、2イニング投げた6月10日のDeNA二軍戦こそ37球だったが、6月22日の西武二軍戦が2回・23球、7月2日の楽天二軍戦が2回・19球、7月5日のヤクルト二軍戦が2回・27球、7月8日の日本ハム二軍戦が2回・26球と、少ない球数で抑えていた。
四球減少の理由について「今までボール1球投げたら、そのボールの残像というか、イメージみたいなものを引きずってしまって、よくない方にズルズルいくことがあったんですけど、気持ちの切り替えだったり、四球を出しても次のバッターでしっかり勝負する気持ちでやれているところが良い方向に行っているのかなと思います」と説明した。
ファームでは2イニング投げた登板の多くが、1イニング目は「自分の持ち味としてストレートを磨いていきたいところがあるので、ストレートで勝負していくところをキャッチャーと話しています」と、ストレート主体の投球で、7月2日の楽天二軍戦が1イニング目の7回に14球中12球ストレートを投げれば、7月5日のヤクルト二軍戦は1イニング目の6回は9球全てストレートだった。
変化球でもフォークで空振りが奪え、本人も「最近だと安定してカウントを取れているかなと思います」と話し、スライダーも「空振り取れたりとか、カウントを取れたりもできるようになってきているかなと思います」と良い感覚で投げられるようになった。
降格後ファームで8試合・12回2/3を投げ、防御率0.71、7被安打、10奪三振、3与四球という投球内容で、「数字的なところでも防御率も下がってきていて、打たれているところも最近は連打されなくなってきている。変化球もそうですが、劇的という感じではないですけど、少しずつ良くなっているかなと思います」と自信を持って7月11日に再昇格。
◆ ZOZOマリンでのマウンド
再昇格後初登板となった7月12日の西武戦では、「高校時代も投げたマウンドだったので、そこに戻ってくることが目標のひとつではありました。それを達成できたので、ひとつ自分の中の目標を達成できたので良かったと思います」と、一軍の公式戦では初めてZOZOマリンスタジアムのマウンドに上がった。
学生時代はマリーンズファンでスタンドから選手を応援する立場だったが、応援される側に変わった。「名前を呼ばれた時とかにスタンドから声援を送ってくれたので、すごく嬉しかったですね」と振り返る。
0-5の9回先頭の渡部聖弥を二飛、長谷川信哉を左飛、古賀悠斗を右飛で、1イニングをわずか10球の三者凡退に抑えた。
続く7月15日のソフトバンク戦は、1イニング目となった2-6の6回は無失点に抑えたが、2イニング目となった7回に4点を喫した。それでも、2-6の6回一死走者なしで周東佑京の初球に投じた149キロインコースストレート、2-6の6回一死一塁で柳町達から空振りを奪った初球の外角140キロフォークは良かった。
早坂は7月15日のソフトバンク戦の投球について「真っ直ぐの強さはちゃんと出せているかなと思うんですけど、フォークはホークス戦の時に最後決めきれずに真っ直ぐを狙われたりとか、結局カウントを悪くしてしまって四球を出したりとかもあった。そういうところは練習していかないといけないなと改めて思いました」と反省した。
再昇格後は6試合に登板したが、8月12日に一軍登録を抹消。その後、ファームで4試合に登板したが9月7日のヤクルト二軍戦を最後に登板がなかった。
今年1年を経験を積んで、方向性は見えてきたのだろうかーー。
「今年後半、腰を怪我してしまっていて、まずはそれは完治させることが最優先になるんですけど、安静にしている期間、今もそうなんですけど、動けるようになった時には体の状態をまず戻していうところがオフは体づくり、1年間戦える体づくりが最優先かなと思います」。
来季はこの経験をしっかりと一軍のマウンドで活かしていきたい。
取材・文=岩下雄太