首位に躍り出たオリックスの不思議な強さ【白球つれづれ】

ベースボールキング

ソフトバンクに逆転勝ちし、タッチを交わすオリックスナイン (C) Kyodo News
ソフトバンクに逆転勝ちし、タッチを交わすオリックスナイン (C) Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第16回

 オリックスの野球とかけて、ウナギと解く。

 その心はつかみどころがないがおいしい。お粗末!

 岸田護監督率いるオリックスが19日のソフトバンク戦で接戦を制してこのカード2勝1敗と勝ち越し。そのソフトバンクと並んで再び同率首位に返り咲いた。(数字は20日現在、以下同じ)

 この試合は7回までソフトバンク先発・松本晴の前に散発3安打と封じ込まれていたが、8回に森友哉選手の一発で追いつくと、9回には絶好調の西川龍馬選手が決勝打を放って逆転勝ち。オリックスの勝負強さが際立ち、逆にソフトバンクは守護神・杉山一樹投手の故障、不在が響いたゲームでもあった。

 今季20試合時点で首位躍進。実は昨年も4月終了時には首位に立っていた。だが、そのチーム事情は大きく違う。

 衝撃が走ったのは今月9日のロッテ戦だった。

 絶対的エースと言える宮城大弥投手が、ゲーム途中で緊急降板。翌日の検査結果は「左肘内側側副靱帯損傷」で今季絶望もあり得るほどの重症だった。

 それだけではない。今季は開幕時点で宮城と並ぶエース候補の山下舜平太が右肘痛、3年前の首位打者・頓宮祐真は右膝痛で欠き、かつての本塁打王・杉本裕太郎は打撃不振で二軍スタート。投打の主力選手をこれだけ欠いては厳しいシーズンが予測された。

 ところが、それでも不思議な強さを発揮しているのが今年のチームだ。まさにつかみどころがない躍進劇である。

 昨年の同時期には打撃陣が絶好調で4月終了時に太田椋、西川、頓宮、杉本、紅林弘太郎の5選手がベストテンに名を連ねている。

 投手陣を見ても宮城2勝、九里亜蓮3勝、田嶋大樹2勝とエース格が順当に白星を積み重ねていった。

 しかし、今季は様相が違う。打者こそ西川、中川圭太、太田の3選手が10傑に入る活躍を見せているが、投手陣は宮城の離脱と言う緊急事態に大きく様相を変えている。

 現時点で主役に躍り出たのは3年目の助っ人、アンダーソン・エスピノーザだ。開幕から3連勝。防御率0.41はリーグトップを行く。宮城の穴を完全に埋める鉄腕ぶりである。加えて投手出身らしい岸田監督の若手抜擢策がチームに新風を吹き込んでいる。

 2年目の寺西成騎、3年目の高島泰都ら若手投手を思い切って先発ローテーションで起用。故障に泣いてきた椋木蓮をセットアッパーに起用すると19日のソフトバンク戦で575日ぶりの勝利を記録する。いずれも指揮官が二軍投手コーチ時代の“岸田チルドレン”たちだ。主力が健在だった昨季とは一味も二味も違う思い切った若返り策が功を奏している。

 前任の中嶋聡監督時代にはリーグ3連覇を果たしたチームも現在は過渡期にある。メジャーに渡った山本由伸投手の存在があまりに大きすぎただけに再建の道は容易ではない。今季のシーズン予想でもAクラスの声は上がるが、上を行くソフトバンクと日本ハムとの差は大きいと見られていた。しかし、ソフトバンクは杉山が自らの不甲斐ない投球に腹を立てて左手骨折。日本ハムはそのソフトバンクによもやの開幕5連敗で沈む。各チームとも誤算との戦いに、まだ突破口は見えない。

 そんな中でオリックスに吉兆?を届けよう。

 昨年7勝16敗2分けと大きく負け越した「天敵」のソフトバンク戦。去年は開幕から同カード4連敗(その前年からは12連敗)したが、今季は初の対戦で2勝1敗。去年9の借金が改善すれば、その差は近づく。

 もう一つの明るい材料は、本拠地・京セラドームでの無類の強さ。昨季はホームゲームに38勝32敗2分けの成績だったが、今季は8勝1敗の圧倒的な強さを見せている。苦手チームを作らないこと。お得意チームにはどん欲に貯金を稼ぐ。優勝を狙うチームには必須の条件だ。

 3位の楽天まで含めて上位3強が0.5ゲーム差にひしめく混パの、この先を読み解くのは難しい。しかし、戦力の誤算を「日替わりヒーロー」で補うオリックスの勢いは注目に値する。

 岸田監督のトレードマークと言えば、試合中もクチャクチャ噛んでいるチューイングガム。接戦になるほど、口の動きは忙しくなると言われる。

 さて、ガムのようにどこまで粘れるか。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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