
西武・栗山巧外野手(42)と炭谷銀仁朗捕手(38)の大ベテラン対談が実現した。今季限りでの引退を表明している栗山と、その背中を追い続けてきた炭谷。若き頃の思い出話から2008年以来遠ざかっている日本一への思いまで、熱い気持ちをぶつけ合った。(取材・構成=大中 彩未)
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ー西武が最後に日本一になった2008年。印象的な試合や出来事を挙げるとしたら?
(栗山)どこっすかね。2008年でしょ。岸くん(孝之・現楽天)が途中から行って、抑えたりな。でもだんだん思い出してくると、2008年の日本一の時は(第7戦の)僕のバント【注1】でしょ。(8回先頭に片岡)ヤスさんが(死球で)出て盗塁して、俺が1発で(巨人の)越智からバント決めたから。中島さんのサードゴロで、キャンブルスタートがあって(同点に追いついた)。
(炭谷)ショートゴロじゃなかったでしたっけ。
(栗)サードゴロ。サードゴロ。そうですよ。印象的なシーンだから、僕のバントですよ。完璧な。
ー全試合出られてる中で一番印象的なのはその場面?
(栗)そうですね。あれやな、おかわり(中村剛也)が、グライシンガーから2本ホームラン打った(第4戦)。あれも印象的でしたね。
―徐々に思い出してくる?
(栗)そうですね。時間かけて思い出していったらですけどね。結構前のことなんで。
ー日本一は2008年が最後だと思うんですけど、その舞台っていうのは野球人生が長い2人の中でどのような舞台でしたか?
(栗)いやー、だからその時はまた来れると思ってたし、そういうチャンスが野球人生の中でまたあるんだろうっていう、走り去っていく中の一つの出来事やと思ってたんですけど、今思えばすごい貴重な、な。めったに巡り会うことできへん。いや、そんなことがあってはならないんですけど、本当は。何回もなくてはいけないんですけど。貴重な経験になってしまったっていうのは、ちょっと悔しいとこやな。
ー炭谷選手どうですか?
(炭)僕は若かったし、優勝のメンバーにいれた、優勝できたっていうよりも、優勝経験させてもらったみたいな方の気持ちが強くて。第5戦に細川さん(亨・現ソフトバンクコーチ)が3回でケガしたんですよ。1打席目で。そこから僕が(マスクを)被ることになって。ピッチャー涌井さんで。1点リードの7回に5連打で4点取られたんですよ。で、次の日の新聞で「キャッチャーが代わった途端打たれた、キャッチャーのせいや」っていう風に書かれて。日本シリーズですよ。(プロ入り)3年目ですよ。ものすごく悔しくて。けど、その時に(現ソフトバンクの)城島さんから電話がかかってきて。自主トレ一緒にやってたんで。「お前あんなん言われてるけど、何も気にするなよって。6戦目7戦目もスタメンやろ。自分が思うようにやってこい」っていう電話がかかってきたんですよ。それで心がめっちゃ楽になって、っていう経験もさせてもらったんですよ。だからそういういろんな経験させてもらったっていう気持ちの方が強くて。「優勝したぞ」の気持ちはあんまないですね。
ーあれから18年経ったいま考える日本シリーズは?
(栗)最高の舞台。素晴らしい。選手としても実力っていうか、実力以上のものを出せるし、成長できる、そういう舞台だったなと、思います。どうですか。
(炭)まあ僕ジャイアンツの時、、
(栗)出てんの?
(炭)あと2回行ってるんですけど、ソフトバンクに8連敗で終わったんですけど。
(栗)日本シリーズ3回出てんの?
(炭)3回です。
(栗)ええな。
(炭)日本シリーズいいですよね。
ー栗山選手は今年ラストイヤーと公言されてる中で、今年最後に出て終わりたい
(栗)それはそうでしょう。それが一番いいんじゃないですかね。
ー炭谷選手は3回出られていますが、今年も、4回目を
(炭)もちろん。一緒にしたら申し訳ないですけど、阿部さんもそうやったんですよ。(巨人の)阿部慎之助さんも。ラスト日本シリーズでホームラン打ってるんですけど。(現メッツの)千賀から。そういうの見たいですね。
ー見たいって言われていますが、どうですか。
(栗)そうですね。見せてあげたいですね。
ー2008年以来の日本シリーズってなると、一番長くシーズンを戦えるところにもつながると思うんですけど、そのあたりは。
(栗)そうですね。1日でも長くプレーして、1日でも長く応援してもらって、その時間をみんなで共有できるっていう、そういうシーズンにしたいですね。
ー最後に、お互いのそれぞれの今季の目標と2人で今季やりたいことをお聞きしてもよろしいですか?
(炭)先に僕から。個人の目標はね。今ここ(2軍)にいるんで、いち早くチームの中で戦力になりたいっていう気持ちが強いですね。で、栗山さんとはね、お立ち台とか言ってますけど、僕本当にやりたいのは、2017年かな、炎獅子【注2】あったでしょ、(ユニホームが)赤い時。あの時に、同点かなんかで、最後ね、僕がデッドボールで塁に出て栗山さんがサヨナラホームラン打ったんですよ。(相手投手はハーマン。8月17日の本拠地・楽天戦)
(栗)そうそうそう。あのね。で?
(炭)ホームランやから僕が先ホームベース到達するじゃないですか。で、栗山さんが帰ってきて、僕、栗山さんと一番最初に抱きついたのがめちゃめちゃ記憶あるんですよ。え、覚えてます?
(栗)覚えてる覚えてる。
(炭)そういうなんか熱いことをやりたいですよね。
(栗)ツーアウトからやった?
(炭)ツーアウトからですね。
(栗)銀仁朗、外崎で、その次(の代打)って言われて。銀仁朗が打席立ってる時点で、もう代打回ってけえへんやん。と思ったら出て、「おお」と思って。で、トノが打ったから出て、「おお」と思って。ほんで、えいやーでホームラン打ったんや。。
(炭)なんで僕に代走出てないかも今思えば不思議やし。
(栗)同点やったっけ、あれ。同点やったと思うねん。同点で(投手)ハーマン。
(炭)ハーマンでしたっけ。とりあえずサヨナラホームランで僕はベース前で待ってて抱き合ったっていう記憶はあるんで。
ー栗山さんの今季の目標と2人でやりたいことっていうのは?
(栗)今季の目標は、とにかく自分がやってきていること、それの集大成としてしっかり打撃において手応え、実感が得られるシーズンにしたいと。で、やっぱり優勝したいですね。優勝に向かうメンバーの一人としてベンチ入りしてね。で、さっき炭谷が言っていたみたいに、そういう熱い場面が来てね、そういう試合を決めれるような、そうなったらいいなと思いますね。
ーそしたら2人でお立ち台っていうのも叶えられそうですね。
(栗)そうですね。可能性としては。まずは1軍上がることやな。
(炭)はい、ですね。
(栗)この状況を「打破」せなあかん。チームスローガンにもかけて打破していこうっていう。前向きにね
(炭)そのことについてだったら、あと5時間ぐらい喋れますよ。
(栗)いや、もうその気持ちも打破していこう。
【注1】08年の巨人との日本シリーズ、3勝3敗で迎えた第7戦。1点を追う8回無死二塁で栗山が一塁前に犠打を決め、逆転につなげた。
【注2】期間限定の赤い「炎獅子」ユニホームを着用して戦った17年8月17日の楽天戦(メットライフD)。両軍無得点の9回裏2死一、二塁で代打・栗山がサヨナラ3ランを放ち試合を決めた。