森友哉に続く「Vの使者」に? 地元に帰還する西川龍馬とオリックスの“好相性”に迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

オリックス・バファローズ・西川龍馬選手(C)パーソル パ・リーグTV
オリックス・バファローズ・西川龍馬選手(C)パーソル パ・リーグTV

大阪府出身の西川龍馬にとっては、久々の“地元凱旋”でもある

 11月22日、オリックスが今オフにFA権を行使していた西川龍馬選手の入団を発表した。大阪府出身ながら、敦賀気比高校、王子、そして広島と、地元を離れてのプレーが続いてきた西川選手にとって、今回の移籍は地元への凱旋にもなっている。

 今回は、西川選手のこれまでの球歴、選手としての特徴に加えて、現在のオリックスの外野手争いの状況を紹介。西川選手の加入がオリックスにとってどれだけ大きな意味を持つのかについて、具体的な数字をもとに解説していきたい。

入団初年度から一軍に定着し、コンスタントに高打率を記録し続けてきた

 西川選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

西川龍馬選手 年度別成績(C)PLM
西川龍馬選手 年度別成績(C)PLM

 西川選手は敦賀気比高校から王子を経て、2015年のドラフト5位で広島に入団。プロ1年目の2016年から早くも一軍に定着し、62試合の出場で打率.294を記録。続く2017年はさらに出場機会を増加させ、内野のスーパーサブとしてチームのリーグ連覇にも寄与した。

 3年目の2018年は初めて100試合以上に出場し、打率.309、OPS.814とハイレベルな打撃成績を残してリーグ3連覇に大きく貢献。そして、2019年はそれまで主戦場とした三塁から外野にポジションを移し、自身初の規定打席に到達。打率.297に加えてキャリア最多の16本塁打を放ち、中軸打者として存在感を示した。

 2020年にはケガの影響で76試合の出場にとどまったものの、打率.304と出場した試合では優れた成績を残した。2021年は2年ぶりに規定打席へ到達したものの、2022年は再び故障で出場が100試合に届かず。打率.315、OPS.822とキャリア最高の数字を残しただけに、規定打席にわずか19打席届かなかったのが惜しまれるシーズンとなった。

 2023年はチーム事情に応じて4番も務めるなど、主軸としてチームをけん引。怪我の影響でフル出場はならなかったが、443打席とちょうど規定打席に到達したうえで、セ・リーグ2位の打率.305を記録。自身初めて外野手部門のベストナインを受賞するなど、チームの2位躍進にも大きく貢献を果たした。

抜群の勝負強さや意表を突く「悪球打ち」によって、大きな存在感を発揮してきた

 次に、西川選手が記録した年度別の指標を見ていきたい。

西川龍馬選手 年度別指標(C)PLM
西川龍馬選手 年度別指標(C)PLM

 通算打率.299という数字が示す通り、卓越したミート力を備えている。8年間のキャリアにおいて、打率が.285を下回ったのは1度のみと、安定した打率を残すことにかけては球界屈指の存在だ。さらに、昨季のセ・リーグでは3名しかいなかった3割打者の一人でもあり、投高打低の傾向が強まる中でも結果を残し続けている点も頼もしい。

 また、2023年は打率.305に対して出塁率は.337と、早打ちの傾向が強い。それに加えて、少々のボール球であってもヒットにしてしまう「悪球打ち」の技術も特徴の一つであり、バッテリーにとっては様々な意味で打ち取ることが難しい選手といえる。

 そして、通算打率.299に対して、得点圏打率は.308と、チャンスでの勝負強さも持ち合わせる。2022年には得点圏打率.380という抜群の数字を残し、昨季も3割を超える得点圏打率を記録。新天地でも中軸として同様の働きを見せれば、チームの得点力向上にもつながるはずだ。

 守備面ではプロ入り当初は内野手だったが、2018年に三塁手として17失策を喫するなど安定感を欠き、2019年以降は外野手に転向。外野手としてはレフトだけでなくセンターもこなしながら一定以上の守備力を発揮し、内野手時代とは異なる姿を見せている。

 西川選手にとって最大の懸念材料は、毎シーズンのように悩まされているケガとの戦いだ。その点、パ・リーグの主催試合では指名打者制度が導入されていることは大きなプラスとなりうる。コンディションが悪い時には打撃に専念できる環境が整っていることによって、長期離脱を避けることができるかに注目だ。

センターを守る中川圭太の存在は頼もしいものの……

 最後に、現在のオリックスにおける外野争いの状況を紹介していきたい。中川圭太選手は外野手としてチーム最多の127試合に出場し、打率.269、OPS.751と一定の打撃成績を記録。主にセンターを務めた守備面でもたびたび好プレーを見せており、来季もレギュラーとして大いに期待できる存在だ。

 その一方で、「1番・センター」として2021年からのリーグ連覇に大きく貢献した福田周平選手が打率.191と絶不調に陥り、わずか36試合の出場に終わった。また、2021年の本塁打王・杉本裕太郎選手は打率.242、16本塁打、OPS.723と一定の数字を残したが、故障もあって96試合の出場にとどまっている。

 そんな中で、育成出身のルーキー・茶野篤政選手がブレイクを果たし、チームで2番目に多い89試合で外野守備に就いたのは明るい材料だ。とはいえ、その茶野選手も夏場以降は不振に陥ってレギュラー定着はならず、ポストシーズンへの出場も果たせなかった。

 シーズン終盤とポストシーズンでは捕手の森友哉選手がライトを守るなど、外野の両翼は確固たるレギュラーが不在となっている。センターを守る可能性が高い中川圭選手の存在は頼もしいものの、吉田正尚選手が抜けた穴が埋まりきったとは言い難い状況だ。

 その点、レフトを本職としており、安定して3割前後の打率を見込める西川選手の加入は、チームのニーズに非常にマッチした補強となっている。吉田正選手は西川選手にとって敦賀気比高校の先輩にあたるだけに、同じレフトを守り、背番号「7」を背負った先達と同様に、チームをけん引する活躍を見せてほしいところだ。

高校の先輩と同じポジションと背番号を受け継ぎ、チームを黄金時代へ導けるか

 地元・大阪府出身の好打者が、FA権を行使して地元のチームに移籍。こうした西川選手の経歴は、2022年オフにFAでオリックスに加入し、主力打者としてチームの3連覇に大きく貢献した森選手と、多くの点において共通するものとなっている。

 2020年から2年連続で首位打者を獲得し、NPB通算打率.327という驚異的な数字を残した吉田正選手の抜けた穴は、当然ながら容易に埋まるものではない。しかし、前年の森選手に続いて西川選手が期待通りの活躍を見せ、レフトの穴が完全に埋まったうえで打線の厚みが増せば、ついに吉田正選手が在籍していた時期以上の強力打線が完成するかもしれない。

 球界屈指のアベレージヒッターである西川選手が、中嶋聡監督の巧みな起用法や指名打者制度の恩恵を受けることで状態を保ち、これまで以上の好成績を残すことができるか。地元出身の天才打者が高校の先輩が作った舞台を受け継ぎ、3連覇中のチームを更なる高みへ導くか、ファンならずとも要注目のファクターとなりそうだ。

文・望月遼太

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