けん制の多い投手、少ない投手は? パ・リーグ投手のけん制データを覗いてみる

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福岡ソフトバンク・和田毅投手(左)千葉ロッテ・小島和哉投手【写真:球団提供】
福岡ソフトバンク・和田毅投手(左)千葉ロッテ・小島和哉投手【写真:球団提供】

 日頃注目されることが少ないであろう「けん制」。「昨季印象に残ったけん制は?」と聞かれたら、1、2個絞り出すのがやっとかもしれない。

 しかし、例として昨季の走者1塁の場面を見てみると、2512球と少なくない数のけん制球(偽投を除く)が投じられている。そこで今回は、けん制の回数について投手ごとに調査。けん制の多い投手、少ない投手は誰か、全体の傾向とともに紹介したい。

けん制の頻度は2年連続でオリックスが最少。左右別では左投手のけん制が多い

 はじめに、パ・リーグ全体のけん制回数データを見てみよう。

 以下の表は、2022シーズンと2023シーズンにおける、走者1塁(1、2塁など、1塁以外にも走者がいる場合は含まない)での投球数、けん制回数、けん制間隔を示している。けん制間隔は投球数/けん制回数で算出し、「平均して何投球ごとにけん制をしているか」を表している。

走者1塁時のけん制回数とけん制間隔(2022シーズン)(C)PLM
走者1塁時のけん制回数とけん制間隔(2022シーズン)(C)PLM
走者1塁時のけん制回数とけん制間隔(2023シーズン)(C)PLM
走者1塁時のけん制回数とけん制間隔(2023シーズン)(C)PLM

 球団別で見ると、オリックスが2年ともけん制間隔が長い、すなわち、けん制の頻度が少ない。2022年と比べると、2023年は福岡ソフトバンク以外の5球団でけん制の頻度が減少した。投手の左右別では、2年とも左投手の方がけん制の間隔が約1、2投球分短くなっている。

けん制頻度が最も高かったのは本前郁也と和田毅

 ここからは、選手別に掘り下げていく。以下の表は、2022年、2023年において、先ほどと同じ「走者1塁の場面で200球以上を投じた投手」をけん制間隔昇順に並べ、上位・下位それぞれ5名をピックアップしたものである。

2022シーズンの投手別けん制間隔(C)PLM
2022シーズンの投手別けん制間隔(C)PLM

 2022年は球団別で千葉ロッテが最もけん制頻度が高かったが、投手別で見ても上位3投手が千葉ロッテの投手となった。一方、けん制の頻度が最も少なかったのも千葉ロッテの佐々木朗希投手で、同じ球団でも投手ごとに違いが見られる。

2022シーズンの投手別けん制間隔(C)PLM
2022シーズンの投手別けん制間隔(C)PLM

 2023年には顔ぶれに大きく変化があり、上位5投手のうち4投手が福岡ソフトバンクの投手に。小島和哉投手が唯一、2年連続の上位5投手入りとなった。一方、頻度が少ない投手に田嶋大樹投手、佐々木朗投手が再び名を連ねる中、平良海馬投手の少なさが際立つ結果に。平均して約40投球ごとに、けん制球を1回投げていた。

 なお、2年とも200球以上投げた24投手について、散布図を描くと以下の通り。相関係数は約0.75となった。

けん制間隔の散布図(C)PLM
けん制間隔の散布図(C)PLM

小島和哉、平良海馬に対称的な特徴

 続いて、具体的に投手を数人取り上げ、直近5年間のけん制の傾向を調べてみる。まずはけん制の頻度が高い投手として、今回は小島投手、石川柊太投手、宮西尚生投手のデータを紹介する。

小島和哉投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
小島和哉投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 小島投手は先ほど紹介した2022年、2023年のみならず、2019年から一貫してけん制間隔が短い。全体で4番目にけん制の頻度が高かった2023年は、当人比ではむしろけん制の頻度を減らした年だった。今回の調査で、最も印象的な傾向を示した投手の1人。

石川柊太投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
石川柊太投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 福岡ソフトバンクの石川投手についても、小島投手ほどではないがけん制の頻度が高い様子が見られる。石川投手は2020年から2年連続でスピードアップ賞を受賞するなど、テンポの早さが特徴的な投手であるが、けん制の回数を減らすということはしていないようだ。

宮西尚生投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
宮西尚生投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 最後に宮西投手。中継ぎであるため投球数が200球を超えず、ランキングに登場こそしなかったが、直近5年は小島投手並にけん制の頻度が高かった。けん制の回数は相手走者や、アウトカウント、点差など、さまざまな要因を受けると考えられる。そのため、場面が比較的少ない中継ぎは投手の特徴として断定しにくいが、宮西投手は傾向が一貫しており、けん制の多い投手として考えても良さそうだ。

 反対に、けん制の頻度が低い投手として、平良投手、佐々木朗投手、田嶋投手を紹介したい。

平良海馬投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
平良海馬投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 平良投手は、小島投手とともに今回最も特徴的だった投手の1人である。中継ぎ時代も含めて、そのけん制の少なさは顕著であり、現在のパ・リーグで最もけん制をしない投手と言っていいかもしれない。平良投手は常にクイックモーションで球速も速いため、あえてけん制をする必要がないのだろうか。

佐々木朗希投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
佐々木朗希投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 佐々木朗投手は2021年がプロ初登板であるため参考程度だが、2年続けてけん制の頻度を減らしている。平良投手と比べてクイックモーションが強みであるわけではないが、被打率が直近2年で.180以下と圧倒的に低いため、盗塁されても打たれなけば問題ないという考えなのかもしれない。

田嶋大樹投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM
田嶋大樹投手 直近5年間のけん制回数と間隔(C)PLM

 田嶋投手は直近2年はけん制の頻度が低いが、2020年、2021年はけん制が少ないわけではなかった。2023年のけん制の少なさがベンチの意向なのか偶然なのか断定できず、2024年シーズンでどのような傾向を表すか注目の投手である。

けん制は、地味であるが興味深い

 普段あまり語られることのないけん制だが、中には小島投手や平良投手のように特徴的な傾向を示す投手がいる。今回は触れられなかったが、1塁以外へのけん制や、捕手からのけん制、さらにはちょっとした小ネタ(今季の堀瑞輝投手はけん制を1回しかしていないが、その1回で田中和基選手をアウトにしている)など、まだまだ掘り下げる余地はあり、あらためて野球の奥深さを感じる調査となった。

 細かなプレーひとつひとつにもプロの技術は詰まっており、ときには投手と打者の対戦以外に目を向けると、意外な野球のおもしろさに気付けるかもしれない。

文・武澤潤

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