山本由伸がタイトル総なめ、山下舜平大は新人王【オリックス・バファローズ2023:投手編】

パ・リーグ インサイト

2023.12.27(水) 17:00

オリックス・バファローズ・山本由伸投手(左)山下舜平大投手(中央)東晃平投手(右)【写真:球団提供】
オリックス・バファローズ・山本由伸投手(左)山下舜平大投手(中央)東晃平投手(右)【写真:球団提供】

 2023シーズンのパーソル パ・リーグはオリックス・バファローズが86勝53敗4分、勝率.619の成績で3連覇を果たした。

 オリックスはシーズン序盤から千葉ロッテ、福岡ソフトバンクと上位争いを展開。7月に首位の座をつかむと、8月は今季最長8連勝を含む16勝7敗2分と独走体制に。8月26日に中嶋聡監督の就任後初となる優勝へのマジックナンバー「24」が点灯し、9月20日に満員の本拠地・京セラドーム大阪で3年連続15回目の優勝を決めた。

 今回は2023シーズンの特集として、3連覇の原動力となったオリックス投手陣を回顧する。

リーグ屈指の投手陣 平野佳寿はメモリアルなシーズンに

 チーム投手成績を見ると、オリックスの防御率2.73、24完封、46セーブ、1155奪三振はいずれもリーグトップ。被本塁打73と失点428はリーグ最少、被安打1097と与四球405はリーグ2番目の少なさと鉄壁ぶりが伝わる。

 個人タイトルでは山本由伸投手が今年も投手部門をほぼ独占した。5年連続で規定投球回に到達し、防御率1.21、勝率.727、16勝、169奪三振で史上初の3年連続「投手4冠」。さらに最優秀選手、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞、沢村栄治賞も3年連続で受賞した。ほかにも被本塁打はたった2本、5年連続でWHIPが0点台、9月9日千葉ロッテ戦で自身2年連続2度目のノーヒットノーラン達成と、今季も圧倒的な投球で驚きの記録を残した。

 メジャーからオリックスに復帰して3年目だった平野佳寿投手はメモリアルな1年に。4月28日千葉ロッテ戦で日米通算800試合登板、5月14日福岡ソフトバンク戦でプロ野球史上初となる日米通算200セーブ&200ホールド、そして10月2日北海道日本ハム戦で史上4人目の日米通算250セーブを挙げた。

山下舜平大と東晃平の成長がチームをさらに押し上げた

 ここからはオリックス投手陣から山下舜平大投手と東晃平投手をピックアップ。2投手の目覚ましい活躍からシーズンを振り返りたい。

 3月に開催されたWBCに宮城大弥投手と山本投手が出場。その影響もあって開幕戦のマウンドを任されたのは、プロ3年目の山下舜平大投手だった。

 これまで一軍登板のなかった山下投手だが、3月のオープン戦から鮮烈な印象を残す。常時150km/h台後半を計測するストレートを武器に、3月17日広島戦では4.2回で10三振を奪う。オープン戦4試合15.1回で23奪三振とアピールに成功し、開幕投手として白羽の矢が立った。

 プロ初登板初先発となった3月31日、ベルーナドームで行われた埼玉西武との2023シーズン開幕戦。先頭打者をストレート2球で追い込むと、3球目のフォークで空振り三振と好発進。4回にベテラン・栗山巧選手に先制二塁打を許してしまったが、6回途中まで毎回の7奪三振、被安打4の1失点。自身に勝ち負けはつかなかったものの、上々の結果でデビューを飾る。

 プロ2試合目の登板は開幕戦から中10日の4月11日東北楽天戦。この日も立ち上がりから三振の山を築き、5回でなんと10奪三振。唯一のピンチだった4回裏、1死1、2塁の場面では連続三振で切り抜け、5回無失点でプロ初勝利を挙げた。

 ストレート、カーブ、フォークの3球種で三振を奪う投球スタイルで、プロ初勝利から6月1日広島戦まで自身5連勝。登板間隔も4月は中10日以上空けていたが、5月に入ると中8日と少しずつ短くなっていった。

 シーズン前半を12試合8勝2敗、防御率1.49で折り返した山下投手。選手間投票で初出場したオールスターゲームでは第2戦に先発し、文字通りの “直球勝負” でファンを沸かせた。

 後半戦に入るとチームが優勝に向けて白星を積み上げるなか、山下投手も好調をキープ。8月5日埼玉西武戦は7回途中1失点で球団通算5500勝のメモリアル白星に立ち会うと、8月17日北海道日本ハム戦では7回を投げて自身最多タイ10奪三振。優勝マジック点灯がかかった8月26日千葉ロッテ戦は、最速160km/hを計測した。

 第3腰椎分離症により、8月26日が今季ラスト登板となってしまったが、16試合9勝3敗、防御率1.61、101奪三振の好成績。プロ初登板から会心の投球を続け、チームの3連覇に貢献した剛腕が2023年度新人王に選出された。

 山下投手とともに今季頭角を現したのが東投手。昨年7月に育成から支配下登録された東投手は、今季自身初の開幕一軍入り。ところが4月は中継ぎで2試合連続失点でファームへ合流。それ以降はウエスタン・リーグで11試合に先発し、5勝2敗、防御率2.33とアピールした。

 そして一軍再昇格となった7月30日、北海道日本ハム打線を5回2失点に抑えて今季初勝利。すると連勝街道に突入し、プロ初勝利を挙げた2022年8月6日から自身7連勝、シーズン無敗で終えた。ポストシーズンもパーソル CS パで5回無失点、そして日本シリーズ第3戦では5回1失点で勝利投手に。ゲームメイクに長けた先発投手へ成長を遂げるシーズンだった。

3連覇を支えた先発2人が退団…… 宮城大弥を中心に4連覇を目指す

 このオフは山崎福也投手がFA権を行使して北海道日本ハムへ移籍。ポスティングシステムを利用しメジャーリーグ挑戦を目指す山本投手もドジャースとの契約に合意した。3連覇の中心だった頼もしい2人が退団し、オリックスは2024シーズンを迎える。

 3年連続2桁勝利を挙げた宮城大弥投手がエースと目される先発陣。山下投手と東投手、そして日本シリーズで快投を披露した田嶋大樹投手にはこれまで以上に期待がかかる。また、今季プロ初登板を果たした曽谷龍平投手と齋藤響介投手のさらなる成長、2022年にトミージョン手術を受けた右腕・椋木蓮投手の復帰も待たれるところ。

 鉄壁の中継ぎ投手は宇田川優希投手が「14」、阿部翔太投手が「20」、山崎颯一郎投手が「21」と、新しい背番号で2024シーズンへ。そしてオフにトレードで加入した吉田輝星投手、現役ドラフトで中日から移籍した鈴木博志投手の起用法も来季の見どころのひとつだ。

 2024年はより強固な投手王国を築き、4連覇そして2年ぶりの日本一となるだろうか。

文・菊地綾子

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