食品工場や水産会社で食いつないだ4年間 千葉ロッテ育成右腕が無駄にしない“苦労”

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2022.2.7(月) 08:10

千葉ロッテ・小沼健太※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)
千葉ロッテ・小沼健太※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)

千葉ロッテ・小沼健太は1年目の昨季、2軍で18セーブを挙げてタイトル獲得

 千葉ロッテの育成投手で唯一1軍キャンプに抜擢された2年目・小沼健太投手は、積極姿勢で、アピールを続ける。「自分から行動というか、常に誰かの後ろに行くんじゃなくて、投内連係も真っ先に受けにいったりとか、そういうのを心掛けてやっています」。昨季育成ながらイースタン・リーグで最多セーブ投手賞に輝いた右腕は、早期の支配下登録を目指す。

 189センチの長身から最速152キロを投げ下ろす右腕は、千葉の東総工高からBCリーグで4年間を過ごし、2020年育成ドラフト2位で入団。1年目の昨季は育成ながら2軍でクローザーを務め、18セーブを挙げセーブ王に輝いた。

「タイトルは獲れましたが、三振の数が少なかった。1軍に上がると空振りを取れないと通用しないと思うので、まだまだそういうところは課題かなと思っています」

 23歳の右腕は高校卒業後にBCリーグ・武蔵(現・埼玉武蔵)に入団。大学進学という選択肢もあったが、独立リーグの道を選んだ。「親に迷惑もかけたくなかったので、自分で稼ぎながらやりたいなと思ったんです」。とはいえ、独立リーガーとして働くだけでは生活は厳しかった。給料が出るのは公式戦が行われる4月から9月までの半年間だけ。「お給料も少なかったので苦しかったです……。コンビニでも安い商品を選びながら買ったりとか、自炊したりしていました」。

 独立リーグ時代の4年間で、アルバイトはいくつも経験。1年目にはスポーツショップとホテルのレストランを掛け持ちし、2年目は食品工場など2件、3年目も派遣とスポンサーの水産会社、4年目には球団の福祉施設でアルバイトし、食いつないだ。「あの時に比べたら今はとてもいい環境なので、幸せです」。苦しさを経験したからこそ、野球の面以外でもありがたみを感じながら過ごす日々だ。

昨季はイースタンでセーブ王を獲得、今季は支配下登録を目指す※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)
昨季はイースタンでセーブ王を獲得、今季は支配下登録を目指す※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)

阪神のキャンプで練習補助のアルバイトをしたことも

 BC茨城時代の2019年、2020年には阪神の宜野座キャンプで練習補助のアルバイトをしたことも。縦縞の練習着を着て、打撃投手やキャッチボールの相手など務めた。「近本さんは、あれだけ走れて打てるのが凄いなと思いました。大山さんのパワーにも驚きました」。NPB選手のプレーを肌で感じ、自分の目指す未来がはっきりとした。

 昨年のファーム日本選手権では、その阪神と激突。9回2点リードの場面で登板したが、3失点しファーム日本一を逃してしまった。「(キャンプで)バッティングピッチャーをしていた選手だけに打たれました……」と今では苦笑いするが、「いい経験、次は1軍の舞台で投げて抑えたいです」と失敗を今後に生かすことを誓う。

 千葉ロッテでは昨年、育成で1軍キャンプに抜擢された本前郁也投手が開幕前に支配下登録。昨季、2軍で10勝を挙げた森遼大朗投手も12月に支配下登録されるなど育成選手の飛躍が目覚ましい。昨季ブレークした佐々木千隼投手や国吉佑樹投手ら中継ぎの層は厚いが、割り込んでいくつもりだ。

「まだ(背番号)3桁なので、シーズン前に支配下登録されて、1軍で10試合以上は投げたいと思っているのでそこを目標に頑張りたいと思います」。2桁の背番号を勝ち取り、飛躍の1年にする。

○小沼健太(おぬま・けんた)1998年6月11日、千葉県旭市生まれ。東総工高(千葉)卒業後はBC武蔵(現・埼玉武蔵)で2年プレーし、2019年にBC茨城へ移籍。2020年の育成ドラフトで2位指名を受け、千葉ロッテに入団した。2021年はイースタンで34試合に登板。0勝2敗18セーブでセーブ王を獲得した。背番号は「121」。身長189センチ、体重86キロ。右投げ右打ち。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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