来季以降は投手王国に? 北海道日本ハムの投手陣に大きな期待が持てる理由とは

パ・リーグ インサイト 望月遼太

北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・伊藤大海投手(C)パーソル パ・リーグTV

シーズン5位に終わったファイターズだが、投手陣には明るい材料も

 2021年シーズンの北海道日本ハムが苦戦した最大の要因は、打線の得点力不足と言える。チーム総得点454という数字は、リーグ唯一の400点台というだけでなく、5位の埼玉西武とも67点差。チーム本塁打78もリーグ唯一の2桁かつ、5位の楽天と30本差という状況だった。

 近藤健介選手は打率.298、11本塁打、OPS.885と意地を見せたが、規定打席に到達したか否かにかかわらず、打率.270を超えた選手も、2桁本塁打を記録した選手も近藤選手ただ一人だったという事実が、チーム全体の打撃不振を物語っている。

 しかし、投手陣に目を向ければ話は別だ。チーム防御率3.32という数字は優勝したオリックスと0.01差のリーグ3位と、十分に優れた水準にあった。チームが調子を上げた後半戦に活躍を見せたピッチャーも少なからず存在し、若手の台頭も含めて明るい材料は多かった。

 今回は、2021年の北海道日本ハム投手陣が残した成績を、先発・リリーフの2部門に分けて振り返っていきたい。そこから見えてくる各投手の活躍や、来季以降に期待できる要素について、詳細に詳細していこう。

上沢投手と伊藤投手は2桁勝利を達成

 2021年の北海道日本ハムにおける、主な先発投手の成績は下記の通り。

北海道日本ハム 2021年の主要先発投手成績(C)PLM
北海道日本ハム 2021年の主要先発投手成績(C)PLM

 先述の通り、今季は先発投手にとっては打線の援護が望みづらい環境だった。実際の数字を見ても、伊藤大海投手はクオリティスタートを17回記録し、QS率73.9%という数字を残したものの、9月15日から6試合続けて勝ち星から見放された。また、シーズン25先発中13試合でQSを記録し、QS率52%だった加藤貴之投手も、打線と噛み合わず6勝に終わっている。

 そんな中で、エースの上沢直之投手は自己最多の12勝を挙げ、防御率も自身初の2点台とキャリアハイの投球を披露。伊藤投手もシーズン最終戦で10勝目をマークし、プロ1年目から2桁勝利とドラフト1位指名の期待に応えた。

 加藤投手も勝ち星こそ伸び悩んだものの、貴重な左の先発として序盤戦はエース級のピッチングを披露。後半戦では調子を崩したものの、10月は4試合で防御率1.00と抜群の投球を見せ、自身初の規定投球回到達も果たした。

後半戦に好投した立野投手と対照的だった投手とは?

 ドリュー・バーヘイゲン投手は来日が開幕後となった影響もあってか序盤はやや不安定だったが、8月以降は防御率1.65と大きく調子を上げ、奪三振率9.38と十二分に持ち味を発揮した。それだけに残留交渉が暗礁に乗り上げたことが悔やまれる。また、若手の立野和明投手も9月以降は7度の先発で防御率1.83というすばらしい活躍を見せ、来季以降の先発ローテーション定着に向けて大きな期待を抱かせている。

 この2名とは対照的だったのが池田隆英投手で、2月にトレードで加入して開幕ローテーション入りを果たすと、4月は防御率2.81、5月は防御率2.16と好投を見せた。しかし、打線の援護に恵まれず、6月終了時点で防御率2.98ながら3勝7敗。後半戦に入ってからは打ち込まれる試合も増えていき、ローテーションからも外れてしまった。それでも、シーズン前半の快投を再現できれば、来季はさらなる活躍も期待できる存在だろう。

 河野投手は登板数が示す通り、今季は先発と中継ぎを兼任。防御率も2.99と前年の5.07から大きく改善し、投手としての進化を示してみせた。しかし、先発時の防御率が4.42だったのに対し、リリーフでの防御率が0.29と、現時点ではブルペンに適性があるといえる結果に。リリーフでは29試合に登板して自責点は1点のみという驚異的な数字を残していたこともあり、来季以降の首脳陣による起用法にも注目だ。

自身初タイトルの堀投手をはじめ、勝ちパターンの投手が奮闘を見せた

 先発陣と同様に、主なリリーフ投手の成績についても見ていきたい。

北海道日本ハム 2021年の主要リリーフ投手成績(C)PLM
北海道日本ハム 2021年の主要リリーフ投手成績(C)PLM

 リリーフでは42ホールドポイントを記録し、自身初の最優秀中継ぎに輝いた堀瑞輝投手の存在が大きかった。チーム最多の60試合に登板し、奪三振率9.45と投球回を上回る奪三振数を記録。ともに防御率4点台以上だった過去2年に比べて飛躍的に安定感を増し、左の中継ぎエースへと飛躍を果たした。

 ブライアン・ロドリゲス投手は来日が遅れた影響で一軍初登板が4月22日となったが、その後は安定した投球を継続。過去3年間はショートスターターやロングリリーフもこなしたが、今季は1イニングを抑える役割を全うした。チーム事情に応じてクローザーも務めるなどフル回転し、来日4年目でキャリアハイのシーズンを送った。

 杉浦稔大選手は昨季まで先発を主戦場としていたが、今季はクローザーに配置転換。3月、5月、7月、9月と無失点に抑えた月が4度あった一方で、4月は防御率5.59、8月は防御率6.00と調子に波があり、いったん抑えから外れる時期もあった。それでも奪三振率は11.36というすばらしい水準で、リーグ3位の28セーブを記録。抑え1年目ながら投手としての能力の高さを示し、首脳陣の抜擢に応えたと言えるだろう。

頼れる中堅・ベテランが同点以下の試合を引き締めたのも大きな要素に

 また、43試合で防御率1.86と抜群の投球を見せた井口和朋投手の存在も大きい。2017年から2年続けて30試合以上に登板し、防御率2点台に抑えた井口投手だが、昨季は防御率4.10とやや安定感を欠いていた。しかし、今季はシーズンを通じて全ての月で防御率3点台以下と常に安定した投球を披露し、自身初の2桁ホールドを記録。ビハインドからリード時まで、幅広い場面で試合を引き締めた。

 その一方で、プロ入り以来毎年50試合以上に登板している宮西尚生投手と、2019年に65試合で防御率2.61を記録し、2020年にはセットアッパーとして21ホールドを挙げた玉井大翔投手が、今季はそれぞれ序盤戦は不振に苦しんだ。それでも、両投手ともに7月以降は状態を大きく上げ、最終的には防御率3点台と本来の実力を発揮。実績ある左右の両輪の復調は、来季以降に向けても明るい材料だ。

 西村天裕投手は時にはロングリリーフを務めながら、奪三振率9.29という数字を記録。プロ入り後の4年間全てで投球回を上回る奪三振数を記録し、2020年を除く3シーズンは防御率も3点台という結果を残しているだけに、来季以降はさらに出番を増やす可能性もあるだろう。独特のフォームから繰り出される球の角度が武器の鈴木健矢投手は、一軍で一定の出場機会を得たことを来季以降に活かし、右打者封じの立ち位置を確立したいところだ。

先発陣には若手が多く、リリーフは全盛期に近い年齢層の投手がそろう

 先発陣では24歳の伊藤大海投手が素晴らしい投球を見せ、23歳の立野投手も終盤戦に台頭。同じく今シーズン成長を見せた23歳の河野投手と共に、近未来の投手陣を引っ張っていく存在へと成長してくれれば、チームの中長期的な展望も明るくなってくる。

 また、上沢投手と池田投手も27歳とまだ成長が見込める時期であり、加藤投手も29歳とベテランと呼ぶには早い。主力としての期待がかかる先発陣の年齢層を考えれば、近未来においてハイレベルな先発投手陣が形成される可能性は十分にあるだろう。

 リリーフでは23歳の堀投手がセットアッパーの座をつかんだが、同じく23歳の鈴木投手はやや苦戦しており、先発陣に比べると、一軍で多くの登板機会を得た若手の数は多くない。それでも、井口投手が27歳、西村投手が28歳、杉浦投手と玉井投手が29歳、ロドリゲス投手が30歳と、全盛期に近い年齢の投手が多いのが特徴だ。36歳ながら鉄腕としての絶大な実績がある宮西投手も含め、こちらも向こう数年は質の高い投球が期待できる。

 ピッチングスタッフは先発・リリーフともに十分な質を備えているだけに、新庄剛志新監督のもとで課題の打線を整備できれば、来季はチーム全体が一気に躍進する可能性も秘めている。大いに期待が持てる投手がそろった北海道日本ハムの投手陣に、来季はぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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