今季は安定感を増したマウンドさばきに
7年目の昨季、自身初となる2ケタ勝利を達成した埼玉西武ライオンズの今井達也投手。今季は開幕投手を任されると、東北楽天打線を7回無失点に抑えてチームの初陣を白星で飾った。そこから現在まで20試合に先発登板し、ここまでリーグトップの149奪三振をマーク。防御率こそ昨季と比べて若干悪化しているものの、課題だった与四球を減らしながら、奪三振を増やすことに成功している。本稿では、昨年から進化したピッチングをデータから見ていきたい。
パでは今井投手だけ。先発投手として異質な投球スタイルに変化
昨季からの大きな変化としては、スライダーの割合を増やしたことが挙げられる。昨季も投球の29.8%を占める主要な変化球ではあったが、今季はその割合が41.8%に増加している。今井投手のスライダーは持ち球の中でストライク率が最も高い球種だったため、今季はスライダーの増加とともに投球全体のストライク率が向上した。長年の課題だった与四球数を少なく抑えることにつなげている。
こうした配球の変化によって、平均球速152.9km/hのストレートと、決め球であるスライダーの2球種で投球の9割近くを占めることとなった。投球割合が40%を超える2つの球種で投球を組み立てる先発投手は、パ・リーグで今井投手のみ(10イニング以上の投手)となっており、異質な配球であることが分かるだろう。まるでリリーフピッチャーのような投球スタイルで、先発ローテーションをこなしているのだ。
狙われてもバットに当たらない圧倒的な球威
変化球をほぼスライダーに絞るという選択をした今井投手。対戦打者の視点では、ほぼ直球とスライダーの2択となる状況は対策が立てやすいようにも感じる。ところが、スイング時に空振りした割合を示すWhiff%でなんとリーグトップを記録していた。Whiff%は昨季の時点でも28.3%と高水準だったが、威力のあるスライダーを増やした今季は30.4%に向上している。相手打者は狙いを絞りやすくなったにも関わらず、今井投手の投球にバットを当てるのが困難だったようだ。
試合後半にピークを迎える球威
さらに、今井投手の特筆すべき点は、3巡目以降でも相手を圧倒しているところだ。一般的に先発投手は1巡目より2巡目、2巡目より3巡目と対戦を重ねるごとに成績が低下する傾向がある。なぜなら、打者が投手の投球フォームやボールの軌道に慣れることで、徐々にスイングやタイミングをアジャストしてくるためである。また、投手が体力を消耗して、球速が低下することも成績悪化の一因となるだろう。ところが、今井投手の場合は本来投手が不利とされる3巡目以降で、1・2巡目よりも奪三振割合が約7ポイント上昇。三振が増えていることもあって、被打率も3巡目以降が最も優れている。
ここで繰り返しになるが、今井投手の投球はそのほとんどがストレートとスライダーで構成されている。3巡目ともなると相手打者も当然それぞれのボールの軌道を打席で体感して迎えているはずで、今井投手の投球は打者の感覚を超越する球威やキレがあるということだろう。球威が試合後半で衰えないどころか、むしろ尻上がりにピークを迎えている点は驚異的である。
2ストライクの打席のうち、半分は三振でアウト
最後に、今井投手の圧倒的な球威と空振りを奪うスキルの高さを示すデータを紹介したい。2ストライクから三振に仕留めた確率を見ると、50.5%でリーグ2位を記録。前年の45.1%から三振割合を向上させ、2ストライクでは対戦打者の半数から三振を奪っている。昨季までは決め球としてチェンジアップやカーブも投げることもあったが、今季は球威抜群のストレートとスライダーを増やすことで三振に仕留める確率を向上させた。
かねてより奪三振数へのこだわりを見せてきた今井達也投手。現在の奪三振数149個はリーグトップに立っており、最多奪三振のタイトルも視界に捉えていると言っていい。残すところ1カ月程度となったレギュラーシーズン、150km/hを超える剛速球と切れ味鋭いスライダーの両牙で三振の山を築き、自身初となるタイトルの獲得を期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2024年8月29日終了時点
文・データスタジアム
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