年々顔ぶれが変わる韋駄天最前線 内野安打一塁到達時間 TOP5

パ・リーグインサイト キビタキビオ

2022.5.24(火) 11:00

2022年の一塁到達(内野安打)最速は!?【パーソル パ・リーグTV GREAT PLAYS presented by G-SHOCK】(C)パーソル パ・リーグTV
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スピード自慢の選手集うパ・リーグで、トップは……?

 野球の魅力は豪快な一発だけにあらず。内野にゴロが転がったときでも、打者走者が送球より早く一塁に到達するかどうかをめぐり、手に汗握るスリルを味わうことが可能だ。

 2022年のプロ野球が開幕して2カ月になろうとしているが、今シーズンもスピード自慢の選手が快足をとばして多くの内野安打を生み出している。

 今回は、開幕日の3月25日から4月30日までに記録された内野安打において、打者が打ってから一塁ベースに触れるまでのタイムを計測。トップ5に入った選手を紹介しよう。

 ただし、セーフティーバントによって内野安打になったケースは除外した。あくまで打ってから走り出した場合での勝負。単純な走力だけでなく、ヒッティングからランニングに転じてトップスピードに持っていく切り替えの素早さや、一塁を目指して全力で走り切る意欲なども含めた総合力がゼロコンマ2桁目にシビアに影響するだけに、毎年選手の顔ぶれが様変わりする世界でもある。

 果たして、“今旬”最前線のトップを張る韋駄天は誰か?

余裕の走りで3秒80の好タイムを出した三森大貴選手(福岡ソフトバンク)

 最初に登場するのは、5位に入った三森大貴選手(福岡ソフトバンク)の3秒80というタイムだ。昨年からセカンドのレギュラーに定着した身体能力抜群の選手だが、筆者個人の計測においては、これまで好タイムを記録する場面と縁がなかった。そのため、正直、「ここまでのタイムを出すとは……」と驚いた。

 一塁かけ抜けタイムの計測を始めて今年で20年になる「かけ抜けマニア」を自称する筆者の経験則からすると、3秒80というタイムはシーズン1位になってもおかしくないレベルである。それにもかかわらず、三森選手は一塁ベース付近で余裕をもってかけ抜けていた。

 最後まで本気で走ったら、どのくらいのタイムを叩き出すのだろう? そんなワクワク感を抱かずにはいられない内野安打だ。

主力の故障で巡ってきたチャンスをものにした高部瑛斗選手(千葉ロッテ)の走り

 4位には、今シーズンからその潜在能力を開花させ活躍中の高部瑛斗選手(千葉ロッテ)による内野安打が食い込んできた。そのタイムは3秒79。このときのバッティングは、低めの変化球に誘い出されて頭が突っ込んでしまい、決して良い形ではなかった。だが、こと走ることに関していえば好都合。打ち終わった形からすでに一歩目を踏み出している体勢であり、内野安打とするにはむしろ好スタートになった。

 現在、パ・リーグで盗塁王争いにも名を連ねている高部選手は、昨年からその俊足ぶりを随所にアピールしていた。だが、外野には荻野貴司選手、岡大海選手、マーティン選手などがいて、なかなか層が厚かった。
今年は荻野貴司選手がキャンプ中に故障離脱したことで空きができた外野の一角に収まり奮闘している。その決め手となったしぶとく泥臭い走りが、この一打にもにじみ出ていた。

青木宣親選手を彷彿とさせる三森選手の「内野安打狙い」打法

 3秒76という好タイムで3位につけたのは、すでに5位入賞を果たした三森選手だった。しかも、このときはなんの変哲もないショートゴロを内野安打にしてしまった。圧巻のひとことだ。

 走者二塁という場面ゆえ、千葉ロッテのショート・エチェバリア選手は捕球後、二塁走者を釘付けにするため目線を二塁に向けてから送球した。その一瞬が命取りとなった格好だ。

 特に注目すべきは、三森選手の打ち終わった直後の踏み出し足の運び方である。5位のタイムを記録したときの打席では、4位の高部選手と同様、変化球に体勢を前に崩されたスイングとなり、振った勢いのままスタートしていた。だが、この打席では、ある程度頭を残したスイングで逆方向へ打っていながら、右足はもう一塁ベースにステップしている。打ち終わる前に走塁動作を始めていた。

 この打法は、現在も東京ヤクルトで活躍している青木宣親選手がまだピチピチの若手だった頃、2005年にセ・リーグで首位打者を獲得したときに得意としていた。いわゆる、「最初から内野安打狙い満々」の打ち方だ。
 もし、意図的にこの打法がしていたのなら末恐ろしい。不調の際にも打率をキープする有効な技術となるので、今後、首位打者争いに加わってくる期待も膨らんでくる。

代走メインで盗塁王獲得の和田康士朗選手(千葉ロッテ)が2位に見参 

 3位の三森選手とわずか0秒01の差とはいえ、3秒75で堂々2位入賞を果たしたのは、代走がメインながらも昨季パ・リーグ盗塁王に輝いた和田康士朗選手(千葉ロッテ)だ。

 なんと、ボテボテのピッチャーゴロをヒットにしてしまった。和田選手は長身長足の体型で、ストライドの広いカモシカのような美しい走り方が特徴の選手。高校時代は陸上部に所属していたことも、そのフォームと関係しているかもしれない。

 今年は代走から脱却してレギュラー定着を目指すも、4位の高部選手に先を越された格好となった和田選手。だが、パ・リーグトップレベルのスピードであることは、このタイムをみても明らかである。

 まだまだ伸びしろあり余る22歳。これからどのような選手に成長していくか見逃せない。

番外編 右打者とセーフティーバント時の最速タイムは?

 さて、1位の前にひと休み。番外編として、ふたつのタイムを用意した。
 ひとつは右打者でもっとも早く一塁をかけ抜けた3秒94というタイム。これは北海道日本ハムの松本剛選手が記録した。

 新庄剛志BIGBOSSのもと、プロ11年目にしてキャリアハイの成績を残しそうな気配の松本選手。右打者が4秒を切るのはプロの俊足選手でも滅多にないことだが、このタイムを記録したときはTOP5に入った左打者たちもそうなっていたように、低めの変化球にバットを放り投げるようにして当てた打撃だった。

 普通ならば、この当たりでアウトになると悟り、走りを緩めてそのまま凡退してしまうところだが、打ってからすぐに全力で走り始めたことが内野安打につながっている。
 松本選手の今年にかける意気込みがにじみ出ていたシーンだと言えるだろう。

 また、もうひとつは、今回対象外としたセーフティーバントによる内野安打のタイム。これは福田周平選手(オリックス)による3秒69がトップをとった。

 セーフティーバントは、半ばスタートを切るような体重移動からバットに当てていることが多い。そのため、普通にスイングしてから走り出すよりも早いタイムが出やすい。

 3秒60台は日本人選手が普通に振っていたら到底出ないタイム。この福田選手のシーンをみれば、しっかり転がしさえすれば出塁するのに有効な手段であることがあらためてわかると思う。

1位を記録した走りは究極のヘッドスライディングによるもの

 結果から言ってしまうと、1位も三森選手でした(笑)。もう笑うしかない。お見事のひと言である。3秒71というタイムは長年みてきた中でも5本の指に入るだろう。
 三森選手がいかに俊足であるかは、もう述べる必要がないと思うので、ここでは最後に決めたヘッドスライディングについて言及したい。このヘッドスライディング、タイムを縮めるにあたり実に理にかなっているのだ。

 一般的に、多くの選手は飛んだあとにお腹のあたりで地面に着地してしまい、こするようにして滑りながら一塁ベースに手が触れる。ところが、三森選手のヘッドスライディングはギリギリまで空中に浮いていて、体が地面に着地するのとほぼ同時に手がベースに触れていた。

 よく一塁ベースは「走り抜けるほうがヘッドスライディングよりも早い」と言われるが、早くに着地して地面をこり減速してしまうことがその一因であると考えられる。しかし、このヘッドスライディングならそのロスが解消されるというわけだ。
究極のヘッドスライディングができたからこそ、今回、最速タイムになった。そうとらえていいだろう。

 ただし、ヘッドスライディングは常に故障のリスクがつきまとう。そのリスクを踏まえると、あまりしないほうがいいというのも真理だと思う。
 三森選手も、時と場所を考えて敢行することをおすすめしたい。

僅かな要因で大きく変動する。それが内野安打一塁到達タイムの世界観

 なかなか新鮮な顔ぶれが出揃った今回の内野安打一塁到達タイム。ただ、TOP5は福岡ソフトバンクと千葉ロッテの選手しかないという珍現象に、眉をひそめたファンもいたのではないか。東北楽天ならば辰己涼介選手や移籍加入で大活躍の西川遥輝選手、埼玉西武なら走塁タイムの常連メンバーである源田壮亮選手、オリックスにもセーフティーバントで1位になった福田周平選手をはじめ佐野皓大選手のようなスペシャリストもいる。故障離脱さえしていなければ、五十幡亮汰選手(北海道日本ハム)が入ってくるかもしれず、楽しみだったのだが……。

 しかし、今回のような開幕後30試合前後のサンプルによるランキングであれば、当然、偏りは生じる。昔からの格言で「走塁にスランプはない」というものがあるが、筆者はその言葉に懐疑的で、ことタイムに限れば心身におけるコンディションの好不調によって結果は大きく違ってくると考えている。

 ましてや、0秒10違うだけで顔ぶれがまったく異なってくるほどシビアなタイムの世界。次に計測したときには、今回のTOP5が全員圏外になっても不思議ではない。
 次に計測したときは、どんな選手が入ってくるだろうか? それを楽しく想像しながら、秋までのペナントレースを追いかけていきたい。

◇動画はこちら
2022年の一塁到達(内野安打)最速は!?【パーソル パ・リーグTV GREAT PLAYS presented by G-SHOCK】

文・キビタキビオ

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