優勝への鍵は “相性” の善し悪し? 昨シーズンのパ・リーグ対戦成績から考える今季の展望

パ・リーグ インサイト

2021.3.26(金) 07:00

PayPayドーム(C)SoftBank HAWKS
PayPayドーム(C)SoftBank HAWKS

 3月26日に開幕するパ・リーグ2021年公式戦。昨シーズンは新型コロナウイルス感染拡大による影響で3カ月遅れの6月に開幕し、そこから2カ月は同一カード6連戦が続いた。それによりカード6連勝・6連敗が起こるなど、例年以上にチームの相性が目に見えるシーズンだったのではないか。そこで今回は2020シーズンのパ・リーグ対戦成績から、リーグ制覇のポイントはどこにあるのかを探っていく。

2020年度パ・リーグ対戦成績(C)PLM
2020年度パ・リーグ対戦成績(C)PLM

ビジターでも強い…… 王者の貫禄見せた福岡ソフトバンク

 一時は千葉ロッテに詰め寄られながら、最終的には2位に14ゲーム差という大差をつけてリーグ優勝を果たした福岡ソフトバンク。対戦成績を見ると、4球団に対して勝ち越し。特に、北海道日本ハム・オリックスに対しては2桁の貯金を稼いだ。2位千葉ロッテにこそ負け越したものの、借金はわずかに1つのみ。得意とする球団からはしっかりと白星を稼ぎ、極端に苦手な球団も作らないという盤石な強さを見せた。

 さらに圧巻なのが、貯金10を稼ぎだしたビジターでの対戦成績だ。昨季、ビジター球場で勝ち越したのは6球団で福岡ソフトバンクのみ。それ以外の5球団で最も成績が良かった楽天でも8つの負け越しがあったことを考えると、福岡ソフトバンクのビジター球場での強さは驚異的と言える。

2020年度ホーム・ビジター別成績(C)PLM
2020年度ホーム・ビジター別成績(C)PLM

 対戦相手も球場も選ばない戦いぶりで、まさに「王者の貫禄」を見せた福岡ソフトバンク。オフには大型補強こそ行わなかったものの、ヘッドコーチとして小久保裕紀氏を招へい。今季は王者として迎える3年ぶりのシーズンとなるが、万全の態勢で5球団を迎え撃つ。

得意不得意がはっきりした千葉ロッテ

 2位・千葉ロッテの戦績の特徴は、福岡ソフトバンクに唯一勝ち越したことに加え、相性の善し悪しがはっきりしている点だ。

 対オリックス戦の成績は18勝5敗1分けと大きく勝ち越したのに対し、対埼玉西武には9勝15敗、対楽天にも8勝15敗1分けと負け越した。オリックスから稼いだ貯金は13だが、埼玉西武・楽天に対する借金も13。相性の良いチームはあったが、それを相性の悪いチームの存在が打ち消してしまった格好だ。首位の福岡ソフトバンクに大きく差をつけられた要因があるとすればこの辺りだろう。

 そこで今季注目したいのがレアード選手だ。昨季は腰痛の影響で長期離脱してしまったため、復活を期すシーズンとなる。万全の状態だった2019年の成績を見てみると、対埼玉西武は打率.356、対楽天は打率.250でともにこのシーズンの通算打率(.248)を上回っており、特に埼玉西武戦は得意としていたことが分かる。今シーズンはまだオープン戦1試合の出場とスロー調整だが、本来の打棒を発揮できれば、チームの対埼玉西武、対楽天の苦手意識を払拭する足がかりとなるだろう。

極端に不得意なチームはないけれど……

 千葉ロッテとは対照的に埼玉西武は、最も苦手とした北海道日本ハム戦でさえ負け越し4つと、それほど大きな数字ではないが、2桁貯金を作れるほどに相性の良いチームが無かったことが順位争いに響いたか。

 前述の通り、2位の千葉ロッテはオリックス相手に13の勝ち越している。それに対し、埼玉西武はオリックスに対して1つ負け越しと、対オリックスのカードだけで7ゲームもの差をつけられたことになる。2桁の勝ち越しを決められるような得意球団があれば、結果は違ったものになっていたかもしれない。

 そんな埼玉西武だが、やはり今季を左右するのは打線だろう。昨シーズンは、打率10傑に一人も名を連ねておらず(チーム最上位は12位の栗山巧選手で打率.272)、リーグ優勝を果たした2018、19年の原動力となった猛打が鳴りを潜めてしまっていた。実際、千葉ロッテに差をつけられたオリックス戦を見ても、ローテーションの軸である山本由伸投手に4試合で防御率0.93と完全に抑え込まれていた。

 巻き返しを期す今シーズンは、不本意な成績で昨季を終えた選手の復調はもちろん、2月の練習試合でホームランを放ち、オープン戦でもアピールを続けるブランドン選手など新戦力の台頭にも期待。王座奪還へ、ししおどし打線の復活は欠かせない。

 3位の埼玉西武とは1ゲーム差と、こちらも僅差の順位争いに敗れ、2019年シーズンから順位を一つ落とした楽天は、最も得意だったのは15勝8敗1分の対千葉ロッテで、逆に苦戦だったのは対福岡ソフトバンクで9勝15敗。埼玉西武同様、2桁貯金を作れるほどに相性の良いチームがなかった。

 2年ぶりのAクラス入り、さらにその先の優勝争いに加わるためには、もう一押しが欲しいところだったが、今シーズン8年ぶりに田中将大投手がチームへ復帰。2013年に楽天を球団史上初のリーグ優勝へと導いたレジェンドがチームに与える影響は計り知れない。開幕投手に内定した涌井秀章投手、岸孝之投手、則本昂大投手、そしてMLBでも第一線だった田中投手が加わった先発ローテーションで頂点へ駆け上がれるか。

昨季は鷹の勢いに飲まれてしまった北海道日本ハム

 5位の北海道日本ハムの対戦成績で目立つのは、やはり対福岡ソフトバンク戦での負け越しの多さ。得意なチームを作れなかったこととあわせて、これが低迷に影響した要因だろう。

北海道日本ハムの対福岡ソフトバンクでの月別成績(C)PLM
北海道日本ハムの対福岡ソフトバンクでの月別成績(C)PLM

 北海道日本ハムの対福岡ソフトバンク月別成績を見ていくと、8月に0勝3敗、10月に0勝6敗だった。この8月と10月の福岡ソフトバンクは連勝中で勢いに乗っており、特に10月は22勝4敗1分と月間勝利数の記録を塗り替えている。つまり、昨季の成績は文字通り「だれにも止められない」状態のチーム相手に負けを重ねた結果といえる。

 そして北海道日本ハムに対して3勝0敗と得意にしていたムーア投手が、昨季限りで福岡ソフトバンクを退団。苦手克服への追い風になりそうだ。

帰ってきた助っ人がオリックスの浮上に貢献できるか

 5位から7ゲーム離され、6位に沈んだオリックスは極端に苦手なチームが2つあったことが響いた。対福岡ソフトバンク戦で5勝17敗2分の借金12、対千葉ロッテ戦で5勝18敗1分の借金13と大きく負け越し。しかし、埼玉西武には12勝11敗1分、楽天にも12勝10敗2分と拮抗しながらも勝ち越すことができており、今シーズンは福岡ソフトバンク、千葉ロッテの両チームとの戦いがポイントとなりそうだ。

 そこで今季からオリックスに再加入するロメロ選手に期待がかかる。昨シーズンは楽天で過ごしたロメロ選手だが、全63打点のうち半分以上の38打点を福岡ソフトバンク・千葉ロッテから稼ぎだすなど、この2球団を得意としていた。中でも、対千葉ロッテ戦では23試合で打率.351、8本塁打と大当たりで、苦手意識を払拭する可能性は十分だ。現時点で来日未定というのが気がかりだが、開幕に間に合えば心強い戦力であることは間違いない。

対戦成績から見える優勝への鍵は……

 ここまで対戦成績をもとに昨季の各チームの戦いぶりを振り返ったが、対戦相性の良いチーム、いわゆる「お得意様」を持っていたかどうかが上位進出の鍵となっていた。当然、全チームにとっての理想は全てのチームに対して大きく勝ち越すことなのだろうが、さすがにそれは現実的ではない。例え苦手とする球団があっても「お得意様」相手に貯金を作るほうが有効だったのが昨シーズンの傾向と言える。

 2021年シーズンは例年通り、開幕から同一カード3連戦が続くが、各球団はいかにして昨季の「お得意様」を継続するのか。はたまた昨季の苦手を克服し、浮上への足がかりとするのか。それぞれの相性にも注目だ。

文・吉村穂乃香

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