埼玉西武ドラ3・伊藤翔投手インタビュー前編
四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスからドラフト3位指名を受けて埼玉西武に入団した伊藤翔投手。
千葉県の横芝敬愛高を卒業後、より早くNPB入りの夢を実現するために独立リーグへ進み、1年目の昨季、最速152キロの速球を武器に独立リーグ日本一に貢献。見事に1年でプロ入りの夢を果たした。
そんな19歳は、速球だけでなく強気な発言も持ち味だ。伊藤投手は徳島時代、先輩たちの前で「エースは僕ですから。シーズンが終わったときにわかると思います」と言い放ち、周囲を驚かせた。
しかし、もともと負けん気が強かったわけではない。その言葉の裏には、伊藤投手の意識を変えた出来事があった。
伊藤投手は横芝敬愛高3年時の2016年秋、プロ志望届を出していたものの、ドラフトでの指名はなかった。その年のドラフトでは、北海道日本ハムの堀瑞輝投手、埼玉西武の今井達也投手、東京ヤクルトの寺島成輝投手、楽天の藤平尚真投手ら、自身と同じ高卒の投手が数多く1位指名を受けた。
その様子をテレビで見ていたという伊藤投手は、ドラフトの中継が終わった時に「自分には何が足りないかを考えた」と振り返る。
「自分は『プロに入りたい。活躍したい』という意識が足りなかったんだと思いました。だから高校では勝てなかったし、注目を集める選手にはなれなかった。それまでは『プロに入れたらいいな』くらいにしか考えていませんでした。プロに行ける人は考えていることが違う。意識の問題だと、その時に気が付きました」
生まれた「勢い」、「これは譲れないなと」
それから伊藤投手は「絶対に1年で追いつく」という強い気持ちを持つようになった。そのためには、チームの中心で投げ、誰よりも勝たなくてはいけないと考えた。
「NPBに行くために独立リーグに来たのに、自分がエースにならないでどうするんだ」
その思いが、先輩たちの前での強気な発言につながった。
「みんな歳は自分より上なんですが、これは譲れないなと。そこは勢いでした」。恥ずかしそうにそう話しながら、伊藤投手は笑みを浮かべた。
それからは「自分で考えるようになった」と話す伊藤投手。自身の投球フォームを携帯の動画で見て徹底的に研究し、それまで140キロ前後だった球速を10キロアップさせた。
さらに、高校まではチームメートとも必要最低限のことしか話さなかったが、捕手とも積極的にコミュニケーションを取るようになった。
「埼玉西武のドラ3は今年で終わりだと言われないように」―
「『何でこうなんですか』と聞いても、徳島では『こいつもういいわ』って見放さないで、ひとつひとつ答えてくれました。それからは、試合中でもいいコミュニケーションが取れるようになったし、勉強にもなりました」
その経験は、NPBに入った今も生きている。自身が「昨年まではテレビの中の人だった」と話す捕手陣にも、気になったことは何でも聞くようにしているという。
「試合が終わった後、『今日のあの球どうでしたか』と聞いています。キャッチャーが一番バッターに近いので、どういう反応していたのかがよくわかると思います。それは今後に生きてくると思う。みんなコミュニケーションを取りやすい環境を作ってくれているので、話しかけにくいということはありません」
悔しい思いをきっかけに変わったプロへの意識が、ドラフト3位という上位指名につながった。過去に埼玉西武にドラフト3位で入団した選手には、昨年新人王を受賞した源田壮亮内野手を始め、浅村栄斗内野手、秋山翔吾外野手、金子侑司外野手、外崎修汰内野手など主力選手が名を連ねており、「西武のドラ3は今年で終わりだと言われないように頑張りたい」と意気込む。
19歳の右腕はチームの先輩たちに続くため、NPBの舞台で飛躍を目指す。
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