「前半バッティングで結果も出ませんでしたし、チームに貢献できなかった。後半少し結果が出始めて、本当にいい感じのままシーズンを終われたのかなと思っています。後半の感じで来年開幕から入れれば1年間通してある程度、結果も出るのかなと感じました」。
ロッテの小川龍成は、確かな手応えを掴んで5年目のシーズンを終えた。
昨季、“三遊間に低いライナーで打てる感覚”を身につけるため、23年11月の秋季練習から必死にバットを振ってきた結果、シーズン自己最多の119試合に出場するなど打撃面で成長を見せたが、今季に向けてプラスアルファとして“強く振る”ことを意識し取り組んだ。
石垣島春季キャンプでは「強さはある程度出てきているので、そこの確実性を高めていくところかなと思います」と話していたが、開幕前の3月18日の取材では「そんなにイメージ通りの打球が打ててることが少ないというか、納得いった打球がまだ出ていないかなと思うので、開幕までもう少ししかないので微調整していきたいなと思います」とポツリ。
昨年のこの時期も試行錯誤していたが、「去年のオープン戦の時期よりかは自分のやりたいことだったり、自分のスタイルが確立しているので、迷いなくそこに向けて色々考えながらではありますけど、やっていけている感じはします」と自信を見せた。
開幕を一軍で迎えたが、「守備においてもバッティングにおいてもまだまだ自分のプレー、求められていることは出しきれていないと思うので、細かい部分までこだわってもっとチームに貢献できるところがあると思う。そこを意識してもっともっと頑張りたい」と、4月終了時点で打率.154と低迷。
5月2日のソフトバンク戦、3-0の5回無死走者なしの第2打席、有原航平に対し2球で追い込まれるもファウル、ボールを見極め、3ボール2ストライクから11球目のインコース低めのカットボールを見送り四球を選ぶなど“らしい”打撃を見せていたが、本人は「あの打席はある程度粘れて、今までやってきたことができていたと思うんですけど、あの1打席しか粘れて自分らしい打席ができたところがなかったと思うので、イメージと違うというか、イメージした通りの打席の作り方だったり、打撃内容はできていなかったかなと思います」と反省の言葉が並んだ。
5月も月間打率.154と徐々に代走、守備固めの出場が増えていった。『9番・セカンド』でスタメン出場した5月31日の日本ハム戦、2-1の5回二死二塁の第2打席、山﨑福也が投じた初球の外角135キロのツーシームに三塁前にセーフティバント安打を決めたが、負傷により6月1日に一軍登録を抹消。
「時間があったので、今の映像と昔の映像を見比べたりとか、いろんなことを試しながら練習する時間を多くできたので良かったかなと思います」。
ファームで過ごす期間に、自身の打撃を見つめ直した。6月17日の巨人二軍戦で実戦復帰すると、0-0の6回無死一塁の第3打席、戸田が投じた初球の130キロ外角カットボールを一塁側にセーフティ気味の送りバント。「場面がノーアウト一塁だったので、セーフティのサインでしたけど、自分の中では送り気味でやるというところは意識してやったのでいいバントが決められたなと思います」。昨年の秋から“一塁側のセーフティバント”練習を何度も繰り返してきた形を実戦で披露。
6月20日に一軍登録されると、同日のDeNA戦に代走で出場し二塁盗塁を決め、翌21日からは先発出場。6月22日のDeNA戦は初回の第1打席、「追加点のチャンスに回ってきたのでなんとかランナーを還そうと思って行きました。しっかり還すことができて良かった」と適時打を放つと、4回の第3打席でも「チャンスだったので、思いきって初球から打ちにいった結果、タイムリーになって良かった」と2点適時打を放つなど、3安打3打点の大暴れ。
6月24日の巨人戦では、「結果的に出てきているので、それは良かったかなと思うんですけど、まだまだ確実性であったり、練習の時からもっともっと確率良く打てるようにしていきたいというのはあるので、もっと確実性を上げてやりたいと思います」と、6-4の6回無死走者なしの第3打席、バルドナードが1ボール2ストライクから投じた5球目のスライダーをこれまで取り組んできた形のレフト前への安打だった。
6月29日のソフトバンク戦以降、バットの芯の部分が通常のバットよりも太くなっている“トルピードバット”を使用した。
トルピードバットを使用するようになった理由について小川は「できるだけポイントを近くしてという感じなので、手元に当たる方が多くなるのかなというのがあります。なので、まずはそこにバットの芯を持ってくるところ。ヘッドが手元にあった方が操作性が上がるので、自分はバットを上手く使いながらしっかりやっていくところだと思います。そういった意味でトルピードバットがあっているので使っています」と説明した。バットの長さと重さは、84センチ900グラムで変わらない。
“トルピードバット”に変更してからのバッティングでは、7月15日のソフトバンク戦、2-6の7回無死一塁の第3打席、有原が2ボール2ストライクから投じた6球目の外角ツーシームをレフト前に弾き返す安打は“小川らしい”安打だった。
「しっかりヒットも出ているので、打ちにいけているところは、すごくいいところかなと思うんですけど、粘りだったり四球というところがまだ取れていない。追い込まれた後のアプローチだったり、もっともっとやっていかないといけないと思います」。
試合中は“トルピードバット”で打っているが、試合前練習では「最初はトルピードじゃないバットで打って(ティー打撃の時)。ヘッドの重みを感じながら、ヘッドを走らせるという感じで少し練習してから、トルピードでという感じです。トルピードで全部打つとバットの先が、重心が下なので、ヘッドの感覚とかが出にくい。最初トルピードじゃないバットはヘッドが先にあるので、ヘッドを走らせる感覚を練習しています」と、“トルピードバット”ではないバットで打撃練習。
日々結果を残すため、準備する中で、8月30日のソフトバンク戦では、4-4の6回二死一、三塁の第3打席、有原が2ボール2ストライクから投じた5球目のインコース143キロカットボールをレフト前に放った適時打は、“小川らしい”バッティングだった。
小川は「追い込まれてからああいった形でヒットが出るのは持ち味というか、自分の良いところだと思います」と自己分析しながらも、「追い込まれてからああいう打席を増やしていけたら良いのかなと思うんですけど、もっと早いカウントでしっかり捉えた打球を打てるようにならないといけないと思うので、そこは意識しています」と課題を口にした。
9月に入ると、4日の日本ハム戦から8日のオリックス戦にかけて5試合連続安打、15日の楽天戦から27日の日本ハム戦にかけて8試合連続安打と、9・10月は打率.362(58打数21安打)。「感覚的にもすごく良くなっていますし、試合でも結果がしっかり出て、自分の理想のバッティングができることが増えている。そこは良くなっているのかなと思います」。23年11月の秋季練習から必死にバットを振ってきた形が“結果”として現れた。
出場試合数は昨年よりも減少したが、87試合に出場して、打率.264、13打点、12四球、得点圏打率は驚異の.383と勝負強さを見せた。
チャンスに強い理由については「特にいつも通り、チャンスで回ってきても自分で決めるというよりも、後ろに繋いだり、なんとか自分の持ち味を出して、それがたまたま良い結果になっているだけなので、よかったなと思います」と説明した。
守っても、「前半戦は簡単なミスだったり、凡ミスがあったので、シーズン中、ずっとそういうところをなくしたいと思って練習していたので、結果的に後半戦、ミスなくできていることは良いことかなと思います」と、7月19日のオリックス戦でエラーしたのを最後に、7月20日のオリックス戦から守備についた試合は41試合連続無失策でシーズンを終えた。
オールスター明け無失策の要因については、「感覚的にそうですし、細かい技術的なところも前半から修正して後半に臨めたところが後半良い結果になったのかなと思います」と分析した。
来季からサブロー監督が就任する。「求められているところは変わらないと思うので、しっかり守備、走塁で誰よりも貢献して、攻撃の方でも自分の役割だったり、レベルアップしてヒットを打ったり、そういったところももっともっとやっていきたいと思うので、自分の役割は変わらないですし、やることは変わらないと思うので、その中でレベルアップしてもっともっと結果を出せればなと思います」。
そして来季に向けて「レギュラーと呼ばれるほどの結果を出して、1年間通してスタメンでレギュラーとして結果にこだわって結果を出せたらなと思います」と力を込めた。来季、レギュラー定着を狙う。
取材・文=岩下雄太