田中将大はもう少し見てみないと、という見立てです。セ・リーグでは阪神が好調ですね【大島康徳の負くっか魂!!】

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2021.5.2(日) 11:00


4月16日の日本ハム戦[東京ドーム]で、中田に浮いたストレートをホームランされた田中将[楽天]。今後はストレートをどの段階でしっかり投げられるか、次第でしょう

変化球はさすがだったが


 4月16日の日本ハム─楽天戦(東京ドーム)で、約半年ぶりに現場に出かけて解説の仕事をさせていただきました。これまでもリモートではやっていたのですが、やっぱり現場はいいですね。画面越しとは全然違います。アナウンサーの方の言わんとすることも瞬時に分かるし、お客さんの臨場感というものも伝わってきますしね。お客さんもまだ大きな声は出せませんけれども、数は少なくてもお客さんの「目」がある中でのプレーのほうが、選手には刺激があるし、やりやすいだろうな、ということをあらためて感じました。

 球場への出入りも、以前は体温を測って、書類に書いて、みたいな手続きがあったのですが、今はサーモカメラでパッと測ってすぐに入れるようになっていますから、お客さんを入れるときも同じだと思いますが、球場側も手慣れてきてスムーズな流れを作ってくれていると感じました。感染対策をする気持ちの上では、「慣れ」はいけないんでしょうけれども、実務的なところでは、ですね。

 その日の試合は、ちょうど田中将大の楽天復帰後初登板でした。右足を痛めてから、調整登板なしでの、まさにメジャー流の戦列復帰でした。立ち上がりはそんなに悪い感じはなかったのですが、ストレートが浮いたところを、中田(中田翔)と石井(石井一成)にホームランされて敗れました。

 中田に打たれたボールは、スピード自体は150キロ以上出ていたはずで、それをスタンドまで運ばれたのは、スピード表示ほどには球に力がない、ということでしょう。ホームラン打者ではない石井に打たれたことからも、それは分かりますよね。

 打たれたあと、変化球主体に切り替えてから抑えたのはさすがでしたが、だからと言って、次は最初から変化球中心で、というわけにはいきませんから、「ストレートが浮かずに投げられるか、または狙って高めに威力のあるストレートを投げられるようになるか、もう2、3試合見てみないと分からないな」というのが、僕の田中将に対する見立てです。

 やはり、たとえ変化球主体に切り替えて抑えられる技術がある田中将であっても、ストレートが速くないと変化球も生きてこない、ということはある。制球力と威力のあるストレートを取り戻した上で、同じ軌道で両サイドに変化球を散らす、落とすということができて初めて、「ヨシいける」となると思います。この号が出るまでにはもう1試合投げているでしょうが、その状態に、どの段階で持ってこられるかでしょうね。

 メジャーの先発ピッチャーの感覚で言ったら、今はキャンプの延長みたいな感じで徐々に球数を増やして状態を上げていくという時期ですから、体に染みついたそのリズムで上げていけばいいと思います。

阪神は当分止まらない?


 セ・リーグでは、阪神が強いですね。佐藤輝明に触発された打線が、ジェフリー・マルテ、サンズの両外国人のほか、大山(大山悠輔)や近本(近本光司)の調子も上がってきて、佐藤輝が打てなくても勝てる感じになってきた。ピッチャーも頑張っていて、今、セ・リーグの中では一番投打のバランスがいいですよね。ピッチャーでは藤浪(藤浪晋太郎)も、力の抜き方を覚えたのか、そんなに力み返らなくても150キロ台半ばのボールが出るようになっていますもんね。

 大山も、効果的なホームランを打てるようになってきましたから、これからは精神的に余裕を持って臨めることになるでしょう。この辺は数字の魔力ですが、もう焦る必要はないですから、いいほうに転がっていくのではないでしょうか。

 阪神のこの勢いは、当分止まらないような気はしますね。気の早い大阪のファンは、もう「ようし、優勝マジック出たぞ」と思っているんじゃないですか(笑)。

 この先は、勝ちゲームに出てくる岩崎(岩崎優)、ロベルト・スアレスを使い過ぎないように気をつけることでしょう。今年は9回打ち切りが見えていて、引き分けも有利に働くはず、というのがありますから、リリーフをどんどんつぎ込みたくなる条件がそろっていますが、そこをしっかりと制御していくことではないでしょうか。

 阪神を追いかけていくのは、やはり巨人になるでしょう。主力が何人か欠けた状態でも連勝してきましたから、ベストオーダーになれば、阪神を追う、あるいは抜くという戦いもできると思います。

 ただその巨人で、阪神との戦いの中で僕がちょっと気になったのは、4月20日の試合(東京ドーム)での大城(大城卓三)のリードでした。彼は左投手対右打者のときは、インコースの使い方が非常にうまいのですが、そのゲームでは、右投手のサンチェスに対して、ボール先行の状況でインコースを要求する場面があり、ピッチャーに窮屈な心理状態で投げさせてしまっているのではないかなという気がしたのです。

 右投手の右打者のインサイドへのボールは、やはりなかなか投げるのが難しいですから、相手に「来るぞ」と印象づけられれば、実際に投げるのは少ない球数で効果をもたらすことも可能です。これは僕の現役時代の話ですが、広島戦で僕だけインコースに厳しい球が来るので、広島の捕手だった水沼(水沼四郎)さんが、のちにトレードで中日に来たとき、理由を聞いたことがあります。すると「お前をターゲットにしとけば、ほかの打者にも波及効果があるだろ。あれはチームプレーなんだよ」とのことでした。そういった使い方もあるというのを、大城捕手も知ってほしいな、と思いました。巨人は、阪神に離れず行けば、この先に必ず面白い戦いが待っていると思いますのでね。

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