ロッテ・チーム強化の舞台裏 2025常勝軍団への道 明日を変える『プロジェクトM』

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2022.3.15(火) 11:00

若手が芽を出し始めるなど、着実に進んでいるチーム強化。その取り組みをひも解けば、見えてくるのは何も現場だけではない。監督・選手、球団職員、そしてファン──。いずれも共通認識は“勝利”の二文字のみだからこそ、確かなドラフト戦略を打ち出すなど、明確な中長期的なビジョンを掲げている。

誇りを持つため



昨季のCSファーストステージ突破後、スタンドにあいさつするナイン。スタジアムを包む熱狂は絶えず継続させていく

 本拠地・ZOZOマリン。選手用の入り口からロッカールームを結ぶ廊下のカベには、力強い言葉が並んでいる。

『その1点が、明日を変える。』

『だから、俺たちは熱狂する。その粘り強さに。本気の執念に。』

 士気を高める言葉のほか、ファンの思いが代弁されたものもある。球場入りして最初に目にする場所。井口資仁監督も「気持ちが入る」と話すほど、熱い言葉の数々は、チームの共通認識として意識を高めるものにほかならない。

 思いを形へ──。“カベの言葉”は球団の取り組みを象徴するものだが、ことの始まりは2018、19年の球団経営の黒字化。ただ当時は、球団全体の明確な方針がなかったのも事実だった。漠然と進んだ先の“黒字化”でもあった。

 さまざまなイベントを展開して集客数を伸ばし、ファンの熱量を高めた結果が出たものの、チームは井口監督初年度の18年がリーグ5位、翌19年は4位。順位こそ上げるも、いずれもBクラス、参戦したのは優勝争いではなく、CS争い。苦闘するチームとは対照的に、球団経営は黒字化に成功。そんなとき、19年12月に河合克美オーナー代行がオーナー代行兼球団社長に就任すると「チームと事業。これが車の両輪でなければならない」の考えを明確に打ち出していく。強いチームを見るため、ファンが球場に足を運び、チケット、グッズ、飲食などの収益が増し好循環が出来上がるのが本来あるべき姿。苦しむチームに反して事業展開が先行する事業の片輪のみが回っている状況から、描いた理想を具現化するため、考えを巡らせた。

「マリーンズってどういうチームか。それすら定まっていなかったんですよね」

 そこで「自分のこととして考えてほしかった」と球団職員に10、20年後のチーム、球団の在るべき姿を考えてもらった。出た答えは「絶えず強く、勝利を求める。そんなチームに携わっているからこそ、自分たちの仕事に誇りを持てる」。まずは歩み進める道を明確にした。

 そうして球団職員主導で長期間の議論を交わし、理念が制定されたのは昨季開幕前のこと。理念は大別して『勝利への挑戦』『勝利の熱狂』『勝利の結束』の3つだ。共通するのは勝利の二文字。勝つことを目指して結束し、ファンを熱狂させる。目指すチームの形を明確としたのは、何よりファンへのメッセージにほかならない。「チームが目指すことと、ファンが望んでいることが一致しないとダメ。皆が同じ方向を向いていないといけないんですよね」と話す河合社長の思いこそが、球場のあらゆる場所に掲示されている“言葉”だ。


河合克美オーナー代行兼球団社長[写真左]の声で球団職員が集って理念を発表。その言葉の数々は選手球場入り口からロッカールームまでのカベに掲げられている[右]

絵空事ではない


 掲げた中長期のビジョンは『2025年に常勝軍団になる』だ。2年連続でリーグ2位に躍進と確かな歩みを続けるのは、チームの強化と成長があってこそ。これを支えた1つが、ドラフト戦略でもある。河合社長は言う。

「明日勝つためなら即戦力を獲るのも手。数年前は、まだ弱いチームでした。だから2、3年先を見る必要があったんです」

 17年秋は安田尚憲、18年秋は藤原恭大と、2年連続で1位指名は高校生。次代の野手の獲得に踏み切ったのは、先を見たからにほかならない。さらにウイークポイントにも目を向けた。19年秋のドラフト前には、パ・リーグで6球団のうち、投手の平均球速は最下位のデータを知れば「その年、彼より速いボールを投げられる投手はいなかった。指名するしかない」(河合社長)と、佐々木朗希を重複覚悟の指名。見事に抽選で引き当て、じっくりと育成し、3年目の今季は開幕先発ローテ当確と順調に成長している。

 さらに昨秋は不足する“若手捕手”を補うべく高卒の松川虎生を単独指名。17年から5年間の1位指名は20年秋の鈴木昭汰を除く4人が高校生だ。今季入団の松川の奮闘もあり、いずれも一軍戦力に割って入るなどチームを一気に若返らせ、チームは成長の一途をたどっている。

 あとは結果だ。2年連続リーグ2位も河合社長は「優勝争いでは常勝軍団ではないんです」と言い、こう続ける。

「最後に勝てないで終わってはダメなんです。昨年は141試合目まで、最後の最後まで優勝を争い、ファンの方たちだけでなく、球団職員も固唾を飲んで1試合1試合を見守りました。掲げたビジョンは絵空事ではなく、現実のことだと実感したと思うんです。優勝争いの緊張感、ワクワク感は現場だけでなく、関わるすべての人たちが感じたこと。それを共有できたのは大きいと思うんです」

 着実に順位を上げてきたチームに残される順位は1つだけ。目指すものが明らかなのは、今季のスローガン『頂点を、つかむ。』が物語る。

「優勝争いのワクワク感は経験できました。じゃあ優勝ってどんな感じなの? 皆、そう思っているはずです。その優勝を知れるチャンスが、ここにあるんです。何としてでもつかみ取りたい。皆が、そう思っているんです」(河合社長)

 球団内の熱はファンへと波及し、声援となってナインの背中を押す。チームと事業は“両輪”ではなく、いまや“束”となり、チーム強化を推し進めている。むろん、25年に常勝軍団となる次なるステップは優勝の二文字のみだ。

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