ロッテ・河合克美オーナー代行兼球団社長インタビュー【前編】

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2022.4.4(月) 10:00

千葉・幕張の地で歩んできた千葉ロッテマリーンズの30年。次なる未来へのトビラを開くのは、何もナインだけではない。球団職員も一体となって誇りある“チーム”を築き上げ、目指すは“常勝軍団”だ。千葉ロッテマリーンズが描く未来──。球団理念を掲げた球団の取り組みが、明日を切り開く。『千葉ロッテマリーンズ30年史』(3月31日発売)に掲載されたロッテ・河合克美オーナー代行兼球団社長のインタビューを前後編に分けてお届けする。

同じ方向を向いて



全社員の思いを一つにするべく昨年8月に全社員に加えて一、二軍の監督、コーチ、そして選手に配布された『ブランドブック』を手にする河合社長

──今年は千葉に移転して30周年。節目の1年を迎えました。

河合 おかげさまで30周年を迎え、今年の『ALL FOR CHIB』のユニフォームは、千葉移転時に着けていた『CLM』のマークを復活します。昨年までは、千葉のテーマカラーの一つである『赤』のユニフォームでしたが“千葉でお世話になる”と千葉に移転した際の最初のマークを着けてて原点に戻ろう、と。30年間ともに歩んできた千葉のファンの皆さんにとって、本当の誇りになれる一歩を踏み出していこう、という思いも込めています。

──昨年3月に策定した『球団理念』も“ファンとともに”の思いが伝わるものです。『勝利への挑戦』『勝利の熱狂』『勝利の結束』と、勝利の2文字が共通ワードと、ファンが最も求めるものと一致します。

河合 そもそも、今まで球団に明快な理念、ビジョンがなかったんですよね。理念をつくるにあたって大事にしたのは、皆が“自分ごと”として考えることです。例えば社長が新しい理念を出しても、その社長が変わってしまえば、また新しい理念になってしまう。それは違うと思うんです。だから、社員たち全員で作り上げていかないといけない。そうして掲げた理念なんです。ベースは社員皆が10年後、20年後、自分たちが管理職、幹部になったときに、千葉ロッテマリーンズがどういうチームであってほしいのか。自分たちの20年後にどうあるべきか。社員たちの思い、考えで策定された理念なんです。

──たどりついたのが、やはり勝利を共通ワードにした先の3つなのですね。

河合 たどり着くまで私もいろいろ考えました。そもそも、マリーンズってどういうチームなの? と聞かれたときに、そこすら定まってなかったわけです。2005年にプレーオフを勝ち抜いて優勝し、10年に3位からCSを勝ち抜いての下克上と、5年に1回は日本一になるかもしれない。そういうチームでも、面白いのかもしれませんし、1つの魅力で良さなのかもしれません。ただ、社員たちが掲げてきたのは「絶えず強く、勝利を求めるチームでいたい」。球団に関わる皆が誇りであるチームに関わる仕事でありたいという答えが出てきたんです。


画像左が昨年1月30日に発表された『Team Voice』、右が同年3月30日に策定された『球団理念』

──そして、中長期的なビジョンには「2025年に常勝軍団」が掲げられたわけですね。

河合 はい。その常勝軍団になるということは、2025年に優勝をすることではないんです。25年に初優勝ではダメ。今年も来年も、そして再来年も優勝し続けて初めて“常勝軍団”になるんです。絶えず優勝争いをするチームと、常勝軍団は違うんです。それを目指して、“言葉”として掲げました。

──着実に頂点に近づき、昨年はシーズン終盤まで優勝を争っての2位です。

河合 141試合目まで、本当に最後の最後まで優勝争いをしました。結果は優勝できませんでしたが、社員たちは分かったと思うんです。自分たちが掲げている理念が絵空事ではない、と。社員も監督・コーチも、選手も皆が「強くて誇りあるチームとなり、絶えず優勝争いをして勝ち抜いていけるチームになるんだ」と。昨年の開幕直前に掲げてから1年が経ち、皆の思いが大きく変わったと思うんですよね。

──“皆”にはファンも含まれます。そんなファンとの一体感も、球団職員の方たちのモチベーションになっているのではないですか。

河合 そうですね。それに僕が(19年12月に社長に)就任して最初に言ったのが「チームと事業が車の両輪でなければならない」ということなんです。強いチームで面白い試合をする。だからファンが球場に足を運んでくれる。チケットの売り上げが増し、そうして観客動員が増えれば、グッズも飲食の売り上げも伸びていく。その収益をチームの補強費や、選手の年俸などに投資していくのが、理想のサイクルなんです。これが回らない限り、球団という事業は成立しません。18、19年は球団の経営を見れば黒字化しましたが、理想的なサイクルだったかと言えば、決してそうではなかったんです。

──シーズンの順位は18年が5位、19年は4位でした。

河合 だから、まずは強いチームをつくることを始めなくてはいけなかったんです。強いチームをつくるには投資をしないといけない。チームが強くなり、実績を上げていけば、ファンたちの熱気も変わってくる。特にファンたちに理念とかビジョンを明快に示していることが、今までと違うんですよね。要するにチームとファンが目指しているものが一緒。同じ方向を向いていないといけなかったんです。

──昨年まで2年連続で2位。特に昨季はマジックも点灯するなど、着実に理念、ビジョンに近づいているわけですね。

河合 何より一番大きく変わったのは、本当に優勝できるんだ、ということ。そういうことを実感したと思うんです。選手が一番、分かったことでしょう。シーズンの最後に優勝を逃し、クライマックスシリーズで敗退したあと、僕は選手たちにこう声をかけたんです。「昨年(20年)の2位と、今年(21年)の2位は全然違う。負けて悔しいという気持ちは同じかもしれないけど、皆の中に『あのときオレが打って1点を取っていれば』『あそこでオレがエラーをしなければ、打ち取っていれば』という具体的な事実が心の中にあるよね」と。「そう思って来年戦えば、結果は違ってくる」という話をしたんです。これは職員にも言えることなんですよ。

──と言うのは。

河合 優勝できるかもしれない。そういう経験をしたことが大きいんです。例えば優勝グッズ。優勝が決まる前には記念グッズを手配しないといけません。でも、優勝を逃せば、それは在庫として残ったまま。グッズの企画・販売をする現場にとっては、本当に真剣な話なんです。「こんなに毎試合、真剣に試合を見たことはありません」と話す社員もいましたから。事業に関わる社員たちも、そういう思いだったんですよ。優勝を争う緊張感、ワクワク感を体感したんです。現場で戦っている選手だけではなく、関わるすべての社員が共有できたことは、ここ何年もなかったこと。球団が一丸となって『絶対に優勝する』ということが。毎年、優勝を目指すとは口にするけど、「まずはAクラスに入ればいいんじゃないの」と思う人も中にはいたのではないかなと思うんです。

<「後編」に続く>

取材・構成=鶴田成秀 写真=榎本郁也

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